駄菓子が10と5つ ページ15
お兄さんの手が僕の頭から離れた。その手を追いかけるように目線を動かした。
「もしかして、もっと撫でてほしかった?」
「…なんでそうなるんですか」
恥ずかしくなって、今日やる分の宿題を取り出した。
今日やるのは、ワークとか問題集とか教科ごとにまばらにあるものたちだ。
やるところはあのプリントよりは少ないし、すぐに終わるだろう。
「たくさん質問してね」
理科のワークから解いていると、その様子を見ていたお兄さんに間違いを指摘された。
「ここは、青じゃなくて赤」
「アルカリなのに?」
「アルカリなのに。」
「アルカリのくせに生意気だ」
「なんだい、それ」
お兄さんに笑われた。
そんな会話をしながら、残る宿題はなくなっていった。
こうやってみてくれる人がいるだけで変わるものなんだな。今までの僕なら絶対提出日前に慌てて終わらせてた。
「…Aくん。いつまでここにいられるのかな?」
真面目な表情のお兄さんは、少し震えた声で訊いてきた。
なんでそんなことを訊くのかと思ったけど、読書感想文を見せる約束があることを思い出した。僕が読ませないまま家に帰ったら、お礼として成り立たないもんな。
「知らない。まあ、最大であと1週間くらいじゃない?」
「まだいられるんだね」
僕の言葉に、彼は息をついた。安心したようだった。
読書感想文を僕がいる間に書けるかも怪しいんだけど。安心されても困る。
「親の気分次第だから、明日で帰るかもしれないよ?」
ニヤニヤと笑いながら、お兄さんの不安を煽るようなことを言ってみた。
「!? そ、それは寂しいよ! 意地でも1週間いてくれないかな!?」
必死すぎて少し気持ち悪いな。
お兄さん寂しいのか…まあ、母さんが早く帰らせようとしたら駄々こねればいいか。……やったことないけど
「…こほん。あとは何が残っているんだい?」
この場の空気を整えるように咳払いをして、そう言うお兄さん。
今日やろうとしていた分はもう終わって、時間をもて余している。
あと残ってるのは副教科系。美術のポスターとか。
「お兄さんが手伝えるものないよ」
「そんなぁ…
……それなら私はAくんの監視役に徹するよ。」
「え」
「やっている様子を見る人がいると、やらないとって気持ちになるだろう? 話し相手にも最適だ。完璧だろう」
別にもう帰ってくれてもいいのだけど、目の前にいる男は帰る気がないらしい。
自信満々な顔で言われても困る。
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壱(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます(*^^*) (2019年11月2日 22時) (レス) id: 16a8646f1c (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - 主人公の言葉に凄い笑いました笑笑 (2019年10月27日 8時) (レス) id: 92785b223f (このIDを非表示/違反報告)
アリア - 壱さん» 一人でテンション上がりまくってました!あと15ってショタじゃない気してきました... (2019年7月29日 11時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
壱(プロフ) - アリアさん» 気づいてしまいましたか…!(嬉)主人公がひっそりいました。 (2019年7月28日 19時) (レス) id: 16a8646f1c (このIDを非表示/違反報告)
アリア - 今気づいたけど設定2に[先輩を攻略するのは難しい]メンバーがいる!今ごろ気づいた! (2019年7月27日 10時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひぃ | 作成日時:2019年2月25日 21時