二十五話【匂いと臭い】 ページ27
「……”完全勝利”。まァ、当たり前ですかね。」
完全勝利と書かれた紙切れを、グシャリと握ってゴミ箱へ捨てる。すると、美智子さんが独り言を聞いていたらしく、私に話しかけてくださった。
「リッパーはんすごいわぁ……。うちのほうは引き分けどす……。勝率下げてまうなぁ……」
落ち込んでいるご様子だ。ここは一声掛けようか。
「私が巻き返すので、勝率なんか気にせず気楽にやってください。無理は駄目ですからね。」
「流石リッパーはんやわ…！おおきになぁ」
にこりと笑い軽く敬礼をする美智子さん。私も返して自室へと戻る。
「ただいま帰りましたよ。」
芸術性のない絵が散らばっているこの部屋は、実に居心地が悪い。……だが、どこか安心する。
矛盾している事は承知の上だが、安心するのだ
「……」
スゥと”彼”の絵を左手で切る。
”彼”を一人占めしたような感覚だろうか。支配下にいる事で、安心感が出てくるのだろうか。
「どちらにせよ、私は私だ。」
彼はもういない。
血の独特な匂いがする中、自分の中でおさえた。
─────────
「…貴方……臭うわ！！」
「……ん？？」
「ウィラさん……？流石にそれは……」
ナワーブと風呂へ入った後、私はクラーク君とカードゲームをするため自室へ戻ろうとした時だった。
調香師。ウィラ・ナイエル、が私を突然指差し、先程の台詞を言ったのだ。
女性にこう……直接的にこのような事を言われたのは初めてだ。流石の私でも腰が抜け、危うく無脊椎動物になりかけた。
「にお……わたし、ふろ……さっきは……」
「い、意識を取り戻して……ほら、深呼吸！」
「ちなみにいうとイライクラーク！……貴方も臭うわ！」
「う…………」
ビジビシと、クラーク君も痛い部分を刺される。これが私版言葉の暴力か……と内心思った。
が、しかし、思ってもない言葉が彼女から出た。
「仕方ないわね……私が臭いを消してあげる！ほら、部屋に来なさい！」
逆ナンだｯｯと、うっきうきで背骨が回復し、立つ。そのまま土下座して「お願いします」と、いう。
クラーク君が、私を白い目で見ていたのは内緒。
「あ、貴方の臭いが気になるからなんだから……好意とかそんなのじゃないわよ！」
世にいうツンデレ、というタイプか。
……とてもいい。
私達は彼女のいうままついていった。
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第五愛(プロフ) - 一作で終わらせようとしたのに……二作目の予定になりそうです。心理の答長編になりそうなので何卒よろしくお願い致します。 (2020年3月4日 0時) (
レス) id: a1b6700df9 (このIDを非表示/違反報告)
第五愛(プロフ) - ｱﾑｶﾘさん» ご心配ありがとうございます……！ｱﾙｶﾘ様もどうかお身体にはお気をつけてください……！ (2020年2月29日 23時) (レス) id: a1b6700df9 (このIDを非表示/違反報告)
ｱﾑｶﾘ(プロフ) - 作者様もお気を付けてください…！ (2020年2月29日 23時) (レス) id: 16831434ed (このIDを非表示/違反報告)
第五愛(プロフ) - 皆さんコロナにはお気を付けて……。 (2020年2月29日 18時) (レス) id: a1b6700df9 (このIDを非表示/違反報告)
あめ - 更新されてるか毎日確認するくらい好きです！待ってます！！ (2020年1月30日 21時) (レス) id: 88aab0d57f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：第五愛 | 作成日時：2019年11月7日 17時
