I/O -a.b.i.l.i.t.y.-1 [D&R]

GAME START/覚醒 8.D ページ23

「っ光くん！」



やっと振り返ればもう既に鵺という化け物が光くんを強い瞳で捕らえる。

そしてだらしなくヨダレを垂らして、最後の品定めするかのように舌なめずりしていた。


このままじゃヤバい…！


そう思っているけれど光くんはその場で呆然と立ち尽くしてしまっていて、自分が捕食者としての恐怖に組み敷かれている。



《ヒョォ…ヒョォォ……！》



鵺が不気味な鳴き声を上げた瞬間、何処からか黒煙が上がっていく。

それさえビクンと体を強ばらせてしまった光くんはもう自力では動けなくなっていた。



「鳴き声に黒煙…って、おい！

マジ危ねぇって何してんだよ光！早く逃げろ！！」


「そ、ぅ……は、言った…って……」



人より頭を回す伊野ちゃんが声を荒らげて光くんを呼び戻す。

けれど光くんは1歩も動くことはおろか、目を逸らすことも出来ないまま。


そしてそれを見つめた鵺は心做しか嬉しそうに笑った後、虎の手を光くんへ振り上げた。



「ぅ、ぁぁ……あ…」



ビュンッと強い風が振り下ろす鵺の手から抜けて俺達へ吹き抜ける。


けれどそのあまりにも圧倒的な力は強者を示し、息をも出来なくなってしまった。



そうして鵺の尖る爪が光くんへと触れる瞬間___。



「っ………光ッ！！！」


「…え､？」









俺の視界の隅から




誰かが




消えた。

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