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それからモヤモヤが晴れたのは、母親が持ってきた一冊の旅行雑誌がきっかけだった。
「ノースメイアだって、聞いたことないね」
母親がぺら、と捲ったページには美しい景色が何枚も印刷されていて、その場所はどうやらノースメイアという国の景色であることが見て分かった。
私は思わず「綺麗」と呟き、母親とその雑誌を眺めた。
「……行ってみたら?ノースメイア」
「は」
それは突拍子もない突然の一言。母は私の顔を見るなり小さく微笑み話し始めた。
「なんだかずっと悩んでるみたいだし。珍しく最近は部屋で歌も歌わないし、春休みも近いんだからちょっと息抜きでもしたら?」
「そんな、息抜きで海外に行くなんて」
「人生何があるか分からないでしょ。ノースメイアに行ってみたら何か素敵な出会いがあるかもしれない。そりゃ親としては娘一人海外に行かせるの心配だけど、あんたなら大丈夫だと思ってるよ。だからちょっと遊びに行ってみなさい」
母は強し、と良く言うが。
自分の子をよく見て困った時に手を差し伸べてくれる母親は、本当に強いと思う。
それからの行動は早かった。母はノースメイア行きの飛行機を予約すると、春休みになった瞬間私を連れ出し空港まで送り届けた。
母は、「誰よりも貴方の歌が好きだから、笑って歌っていて欲しいから元気出してね」と私の背中を押して手を振った。
そして異国の地に降り立った私は、"彼ら"と出会った___
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作者名:ららら | 作成日時:2020年2月21日 11時