君と私の音を紡いで【千】 (ページ4)

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アイドルが嫌いだった。

キラキラしてて、眩しくて、その輝きに心を揺さぶられてしまうのが嫌だった。

「…アイドル、ですか」

所属していた事務所から突然キャラ路線の変更を求められたのは高校二年の春休み前のこと。

歌手として燻っている私を見かねて、事務所側がアイドルとして活動してみないかと言ってきたのだ。
　ーー私は当然断った。

なにしろ、私の曲はアイドルのようにキラキラしてないし、私自身もアイドルのようにはなれないからだ。

事務所の差し出してきたCDには私の歌いたい曲はなく、あぁ、もう事務所は私の歌を必要としていないんだと思った。

君の歌を広めたいと言って私に手を差し伸べた社長も、マネージャーも、もういない。

「私は…」

ぎゅっと握りしめたCD。

事務所のスタッフは、今すぐにじゃなくていいと言ってくれたけれど、私はどうしてもキャラを変えるのが嫌で嫌で、握ったCDを握りしめて割った。

「！？」

その瞬間のスタッフの表情はいつ思い出しても面白い。

「君！！」

入れ物ごと割れたCDを見てスタッフは怒鳴ったが、それに対抗するように私も言いたいことだけ言って事務所を出て行ってやった。

ーーあぁスッキリした。

ただただスッキリした胸の中は、家に帰る頃にはまたモヤモヤし始めていた。