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悪いやつを倒すヒーローになる。
これは僕が幼い頃に夢見た将来だった。
毎週日曜日の朝にやっていた戦隊ヒーローの番組を見て、憧れた夢。
僕はどうしてもヒーローになりたかった。

「これ僕にくれるの？」
「そうよ。これはジョングクがヒーローになるための一歩ね」
「やったあ！今、付けてみる！」

誕生日に母さんがくれたのはヒーローが変身する時に身につけているベルトだった。喜ぶ僕の頭を母さんは優しく撫でてくれた。嬉しかった。母さんが僕の夢を応援してくれていることが。それに、父さんだって。

「おっ、カッコイイじゃないか。似合ってるぞ、ジョングク」
「ほんと！？じゃあ、変身してみるね！」
「っとその前に、悪いやつを倒すには悪いやつと同じ目線にいなきゃいけないだろう？ほら、肩車してやるぞー」

軽々と持ち上げられた僕の体は父さんの肩に乗った。確かにテレビではヒーローが悪いやつを倒す時、ロボットのような大きな何かに乗って倒していた気がする。父さんに聞いたら、それは悪いやつの子分を倒したあと、ボスを倒すときに限ることらしい。

「僕も父さんみたいに大きくなれるかな？」
「なれるさ。でも、そのためには好き嫌いを無くさなきゃいけないよ」
「好き嫌い？」
「そうだ。ジョングクの嫌いな食べ物はなんだっけ？」
「僕はピーマンが嫌いだよ」
「そのピーマンを食べられるようにならないと、悪いやつはやっつけられないぞ。できるか？」
「できる！」
「よーし！さすがパパとママの子だ！」

肩車を終えて僕は父さんの目の前に立った。父さんは僕と同じ目線になるようにしゃがんでいて、母さんがやってくれたように父さんも僕の頭を優しく撫でてくれた。父さんの手は大きくて温かった。

「この先どんなことがあっても、その夢を諦めずに追いかけて絶対に叶えるんだ。いいな、ジョングク」
「うん！」
「ママも応援しているわ」

これが僕が六歳になった日の思い出。

それから数週間後、僕の夢が絶望に変わるなんて誰が想像しただろう。僕の能力について、父さんや母さんは知っていたんだろうか。

「父、さん……っ、母さん……」

チッチッと秒針の動く音だけが聞こえる静けさの中で、僕の目に映ったのは月明かりに照らされる血だらけでバラバラになった父さんと母さんの姿だった。

「これ全部……僕が、やったの……？」

僕の服や手、そして口にまで飛び散っている二人の血。それが証拠だった。

＿＿僕は今、父さんと母さんを食べていた。