STORY.173 ページ33
.
走り出す出久とAの目の前に現れるのは、黒霧と呼ばれるワープの個性を持つ敵。
何も考えず無我夢中に飛び出してしまった二人は、その勢いのままに突っ込んでいく。
しかし、まるでそれを阻止するように目前に見慣れたシルエットが現れた。
大きな爆発音が轟いて、Aは目を細める。
「どっけ、邪魔だ！」
悪人面の笑みを浮かべた勝己が、体制を崩すと黒霧を掴んだ。
力任せにそのまま地面に押し付ける。
それとほぼ同時に、脳無の下半身がパキパキと音を立てて凍っていく。
「てめェらが、オールマイト殺しを実行する役とだけ聞いた」
一気に冷たくなる空間に響く、低い声。その原句となっている轟が、冷たい瞳で脳無を見下ろしている。
少し遅れて登場した切島が個性の硬化で死柄木に攻撃するも、呆気なく避けられてしまう。
「くっそ！いいとこねー！」
「スカしてんじゃねえぞ、モヤモブが！」
「平和の象徴は、てめェら如きに殺れねえよ」
ほぼ同着で現れた三人に、出久が安心したように瞳を潤ませた。
「勝己…！焦凍…！切島くんまで！」
驚いたように目を丸くするAが、安堵の表情で頬を綻ばせる。
先程まで最悪だった状況は、形勢逆転して一気にヒーロー側が有利になった。
心強い味方に、Aは一度落ち着かせるように目を閉じるとすぐに目を開く。
その瞳は強く、毅然とした先を見据えた瞳だ。
それを横目で見つめる轟が、心配そうに眉を下げる。
「A、その怪我…」
Aのボロボロな体を見つめると、轟は苦い顔をした。
切り傷や折れている腕、頭からは血が出ていて、誰から見ても痛々しい。
だが、当の本人はそれをあまり顔に出すことはなく、普通にしている。
Aは目を細めると「大丈夫」と安心させるように笑みを作った。
けどそれは轟には逆効果だったようで、険しい顔つきでAを見つめると「これ以上無茶はするな」と言う。
「心配してくれて、ありがとう」
Aはそう微笑むと、前に視線を戻した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 108人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月神姫(プロフ) - コメントありがとうございます！わざわざ教えてくださって助かります！ (2018年10月17日 17時) (
レス) id: c244c7ed18 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみだいふく - 181脳無の的確な言葉となっています (2018年10月17日 16時) (レス) id: c11c7ecc8d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：月神姫 | 作成日時：2018年9月23日 20時
