恋は空振り、すれ違い【轟焦凍】 (ページ21)

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第二章：掴めない距離感Ⅰ ページ21

次の日の朝。
　家の玄関前に焦凍が立っていた。
　突然だけど、玄関扉を開けたら目の前に焦凍が何食わぬ顔で立っていた。
　焦凍が…………

「なんでいるの!?」

　驚きにまかせて叫んだが、我ながら阿呆なことを言ったと遅れて気付いた。
　昨日した契約の効力のひとつには、互いの気配を察知できるというものがあるからだ。

　それと、引っ越すとき、確かに轟家とは距離を置いた所の家を借りたが、そこには「できるだけ」の言葉が付く。
　通学のことを考えて、実はそこまで離れていなかったりする。良くて直線二キロ半といったところか。正直、徒歩で行き来可能な距離なのだ。それでも入り組んでいて見つかりにくい場所を選んだのに………

「契約で気配を辿った」
「ですよね。………えと、待った？」
「いや、さっき来たところだ」
「むう、ならいいけど……」

　多分、違うな。もっと早く来ていたな、これ。
　隣を歩きながら、確信するが言わないでおく。

「妖華、６年前に引っ越したあとはどうしてたんだ？」
「引っ越した先は、ここから数十キロはなれた町で……、そこから聡明中に通ってた。かなり遠かったけど……まあ、個性を伸ばすためにもちょうど良かったかな。あとは特になにも。――ひ、ヒーローを目指すために勉強と個性の強化ばかりしてたよ」

　ちらりと焦凍の表情をうかがいながら、おそるおそるヒーロー志望だと口にする。
　一体どんな反応をするのだろう………と試してみたのだが、焦凍はいたって変わらない雰囲気で「そうか」とだけ呟いた。

　え、気にしない、の？思ってもみなかった反応に目を丸くする。
　焦凍は、本当に気にしてないようで、言葉を続けた。

「昨日契約したあとすぐに帰ってたが、何か用があったのか？」
「ぶっ?!」

　し、焦凍……あなたなんて爆弾を投下するんだ……。
　――い、言えるわけねぇー…………。
　キスされると勘違いして恥ずかしくなったからなんて言えるわけねぇー…………。

「う、うんそうそう。家の茶の間の電気付けっぱなしだったのを思い出して――」
「嘘だな」
「ふぇ!?」
　バレた!? 早っ！
「お前、嘘付いているとき耳をピコピコ動かしてるぞ」
「なにっ」
　この、正直な耳め！がしっと両耳を手で覆うが、……ああ、確かに。今でも耳が動いてる………

――
原作では、日常では必要以上に個性を使ってはいけない的な条例みたいなものがあったような気がしますが、そこは華麗にスルーしてください。