第一章：全てを捨て置いて�将� ページ16
人がいなくなった教室には、わたしと焦凍だけがいた。
わたしは窓を背に壁に体を寄りかからせ、対峙するように焦凍が佇んでいる。
「……久しぶり、だね。焦凍」
そう、投げ掛けると、焦凍は変わらない空虚な瞳でわたしを捕らえて「ああ」とだけ返す。
と、一歩近づいて焦凍が言葉を発した。
「あの後、どこにいった」
「……うん、ちょっと離れた町に、ね。でもここに入学することになって、またこの町に戻ってきたの…………自分勝手、だよね……」
「……ああ、そうだな。契約も勝手に解約してたしな」
「うん……」
契約。それは、わたしの個性の能力のうちのひとつ。契約を結ぶことによって互いに恩恵を受けることができるというお徳な能力だ。なぜ、こんな能力もあるのかわたしでさえ分からない。
「契約してると……互いの居場所を感じられるからバレちゃうし………」
「………そうか」
焦凍は、短く相槌をうつだけで、それ以上喋ろうとしない。口調も抑揚がなくて、なにを思っているのか分からない。
――………６年前は、なんでも分かったのに……
無意識に、６年前の、まだ私たちの仲がよかった頃の焦凍の面影を重ねてしまう。
あの時より、逞しくなった。強くなった。…………あの時より、表情が無くなってしまった。あの人を恨む感情が強まった。人に興味を示さなくなった。負の感情に捕らわれていた。
ああ、ごめんね。ごめんね、ショート。
そうしてしまった一因は、わたし。
ごめんなさい、焦凍。
「ねぇ、焦凍」
「なんだ」
「――全部、なかったことにしよう」
「………は？」
わたしの言葉に、焦凍は目を大きく開いて、固まった。
え？
……驚いて、る……？
怒ったような声じゃない。むしろ、子供が「いやだ」と駄々をこねるような、悲しさが込められた反応だ。
どうしてそんな反応をするの？ わたしが焦凍にやったことは赦されないことだ。恨まれるのが当然。きっと焦凍にとって忘れたい出来事、のはず――…………
なんで、疑問が顔を出すが胸に押し込めて、憮然と言葉を続けた。
「わたしね、あんなことしてしまったけれど………本当は焦凍には幸せになってもらいたい。だから、６年前のことは忘れて、わたしとの記憶を、忘れてほしいの。大丈夫だよ、わたしの個性を使えば――」
「………それ、本気で言ってんのか。妖華」
「え――」
瞬間、怒気を露にした声がわたしの心を貫いた。
――
轟くんの口調が行方不明(泣)
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黒猫 - 焦凍君と妖華ちゃんの関係が今後どのようになるのか気になります。更新頑張ってください！！ (2019年1月29日 8時) (
レス) id: 08222d2249 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雛月りな | 作成日時：2017年8月15日 14時
