恋は空振り、すれ違い【轟焦凍】 (ページ2)

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第一章：全てを捨て置いてページ2

「ここが……雄英高……」

　私は、その門を前にして、立ち止まって深呼吸をした。

　今日は雄英高の一般入試実技試験当日。様々な制服を着た中学生達が、様々な歩調で、行き交っている。多くの者からはどこかしら緊張が見え隠れしているが、私は別段緊張していない。

　一応、模試はA判定だったし、……過去問も全てやってみたけれど余裕の合格点だった。個性もまあまあ強いし、奉仕心もそこそこある。はず。

　……皆には悪いけれど、落ちる要素は何処にもないと中学の先生には太鼓判を押されている。

「ほんじゃまっ、さくっと行きますかぁ！」

　明るい声で紡ぎながら、門をくぐる。

　――そもそも、何故私が昔酷いことをしたのに、ヒーローを目指しているのか。

　それは勿論、秘密だ。

　雄英高の校舎に入って直ぐのエントランスホールへ向かうと、職員のヒーロー達が受付を行っていた。

「私立聡明中学校の狐月妖華です」

　受付を終えると、受験番号のカードと、機械の写真が記載されているプリントを渡され、ドデカイ会場に連れていかれた。

　それから、受験番号順に並べと指示をされ、席を探す。

「7112、7112……っと、あ」

　既に半分を埋め尽くす程の生徒が所定の位置に座っていた。

　私は真ん中くらいの所まで降りていくと、丁度7100番台の席を発見したので、椅子の後ろに書かれている番号を頼りに歩く、と、ある知り合いを発見した。

　どうやらあちら側も気づいたようで、私を視界に移すなり、手を振ってくれた。

「おはよう狐月くん！」

「うん。おはよー、天哉くん。席隣だね」

「うむ！お互い頑張ろう！」

「あっはは、パワフルだねぇ」

「そういう狐月くんはゆったりしているな！やる気はあるのか！？」

「………結構ズッバズッバ言うね天哉くん」

　案外心に突き刺さる言葉を放たれ、今までふわりふわり揺れていた耳と尻尾がだらーんと、しなれた。

　――私は、個性ゆえに頭とお尻に、狐の耳と尻尾が生えている。

　お陰でいくら感情を殺しても尻尾さえ見れれば一発なので、困るったりゃありゃしない。

「あるよー、勿論。じゃなきゃここに来ないって」

　席に座りながら、当然の如く答えた。天哉くんが「確かにな！」とパワフルに言葉を返すと、グットタイミングで教壇に１人の大人が現れた。

「今日は俺のライヴにようこそー！！エヴィバディセイヘイ！！！」

「「「(シーン)」」」

　静寂がここまで耳に痛いとは知らなかった。