【鬼滅の刃】転生したので暗躍しようと思います

漆．荒れた先の答え ページ22

それから3週間後――


某所。

大きな屋敷の縁側に座る男は、鎹鴉の報告を聞いていた。

その男は鱗滝の鎹鴉から手紙を受け取り早急に日中警備の人員体制が組んだ――鬼殺隊を動かしているトップである。

「そうかい。報告ありがとう」

あれからというもの、度々太陽の下で活動する鬼の出現が報告されるようになった。頻度はまちまちで現れない日もあれば、1日に2、3人現れる時もある。

今のところ一般人の死者は出ておらず、重軽傷者も片手の指で足りるほどで済んでいた。

この異常事態で被害が最小限に抑えられているのは、奇跡と言っていいだろう。

「この功績は間違いなく〈影の導き手〉のお陰だね」

穏やかな声音で紡がれた、〈影の導き手〉。

〈影の導き手〉は、鬼が出現した場所を鬼殺隊の隊員に教えてくれる正体不明の人物である。

矢文だったりハヤブサの伝令鳥だったり狼煙だったり、いろんな手段で居場所を伝える、今回の立役者。

その者なしには日中警備はうまく回らなかっただろう。

「一体、どんな子なんだろうね」

〈影の導き手〉の性別はおろか、どんなナリをしているのかさえ分かってはいない。

恐らく元柱(・・)である鱗滝の手紙に書かれていた最初に日中での鬼の出現を発見した者だろうと推測するが、「本人たっての希望」とのことでその者の素性は伏せられている。

「その子は大丈夫だろうか」

不安げに眉をひそめ、鬼殺隊のトップは意味深めいた言葉を囁いた。



．



その正体不明の〈影の導き手〉である癸七子は今見晴らしのいい山の頂上にいた。

つい先程、日中活動している鬼を発見しその近くにいた鬼殺隊へと疾風を飛ばしたところだ。

弾丸のような速さで飛び立っていった後ろ姿を見送って、深いため息を吐いた。

狐面を横にずらし、ぐしゃっと前髪を握る。

誰かが彼女の顔を見れば、思わず口に手を当て憐れみのような顔をするだろう。

目は充血していて、目元には深い隈に泣き腫らした瞼、髪もボサボサ、頬をげっそりしていて顔色も真っ青で見るも悲惨な顔。

実際、彼女の生活は荒れに荒れていた。

寝るに寝れず、食事も喉を通らず、お風呂じゃなくて川の水で汚れを落とすだけ、濡れた髪はそのまま。

一体なにが彼女をそうさせたのか、言うまでもないだろう。

鬼舞辻の情報をひとつも得られていないからだ。
半年と3週間、四六時中探しているのにひとつも。
もうそんな奴本当は居ないんじゃないかと錯覚しそうになるほど。

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