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(……落ち着け癸七子。今私ができることは鬼殺隊にこの異常事態を知らせること。
大丈夫、なんら不思議なことではない。異常事態を目撃した鬼殺隊が上に報告するのと同じだ)
よし、早速行動だ。
そしてそのためには……
あの人とあの子を、頼る必要がある。
鱗滝さんと、鱗滝さんに預けたあのドジっ子を。
.
同時刻・狭霧山の麓。
日差しが煌々と照り付ける昼下がり。
癸七子が預けた疾風に餌を与え(癸七子からは与えなくていいと言われていたがついつい愛着が湧いてしまって与えていた)、自身も昼食を食べ終えた鱗滝は気晴らしに体でも動かそうかと罠山に入っていた時のことだった。
くん、と矢の匂いが鼻をかすめた。
顔を跳ね上げれば、矢がこちらの方へ飛んできているのを見つける。
(家の方か)
落下地点を推測し、そこに向かう。
一体何事かと思えば、それは矢文だった。
矢から手紙を解いて差出人の名を見て、少しばかり目を見張った。
癸七子からの手紙だ。矢からも微かに癸七子の匂いがする。
だがこの矢が放たれる前は全く癸七子の匂いを感じ取れなかった。一体どんなに遠くから放ったというんだ。
(強くなったな、癸七子)
矢文ひとつで弟子の成長ぶりに感じながらも、なにやら不穏な匂いが立ち込めているのを直感で感じ取り、真剣な面持ちで内容に目を通した。
『略啓 鱗滝左近次殿
信じられないことではありますがこの手紙を届ける僅か30分ほど前、太陽の下でも死なずに活動している鬼を発見しました。血鬼術かと疑いましたが、どうもその類いでは無いようです。
これは異常事態です。
鱗滝さんにはこのことを鬼殺隊に知らせて日中の警備体制の催促をお願いします。また、その際には私のことは伏せて下さい。
私自身も鬼殺隊と連絡を取り、鬼殺の支援をしたいのでしばしば疾風を私の元に置きます。
大変失礼ながら新たな弟子が出来た時は鱗滝さんの伝令鳥を飛ばしていただくようお願いします。
手前勝手な頼みとは承知しておりますがどうかお願いします。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ匆々 瞳原癸七子』
「……」
読み終えた鱗滝は事の重大さを即座に理解し、すぐに己の伝令鳥を飛ばした。
(儂の弟子が、なにやら大変なことに巻き込まれているようだな……)
空を仰ぐ。
快晴はいつしか曇り始め今にも降り出しそうだ。
(無茶だけはするな、癸七子)
手首につけたミサンガに触れながらただそう願うしか無かった。
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雛月りな(プロフ) - 華さん» コメありがとうございます!自分でもこんなに手の込んだ展開が書けるとは思っていませんでした笑。(こっからネタバレかも→)まだ伏線回収がなっていないものがあるので楽しみにしていてくださいね!…皆さんが受け入れてくれる内容かは不安があるんですけど、アハハ (2019年8月17日 10時) (レス) id: e209b0612b (このIDを非表示/違反報告)
雛月りな(プロフ) - noiseーノイズさん» 主人公ちゃん可愛い雰囲気出てましたか!?いつも「口調悪い……もっと可愛くしたい……」と思いながら書いていたので、noise-ノイズさん(名前合ってますか?)のコメント嬉しさ半分と驚き半分で読ませて頂きました!バトル楽しんで頂けて良かったです!! (2019年8月17日 10時) (レス) id: e209b0612b (このIDを非表示/違反報告)
雛月りな(プロフ) - ひにゃたこさん» ありがとうございます!これからも神でいられるように頑張ります笑。嬉しいコメントありがとうございます!! (2019年8月17日 10時) (レス) id: e209b0612b (このIDを非表示/違反報告)
華 - 凄いしか出てきません!!とても面白い展開で、ワクワクしながら見させて頂きました!!大好きです!!これからも頑張って下さい!!応援してます!! (2019年8月17日 3時) (レス) id: 2aa6dd9a8d (このIDを非表示/違反報告)
noiseーノイズ(プロフ) - よ、読みやすいっ.....!主人公ちゃん口調とか可愛い雰囲気を感じるのに物語はすっごいバトルですね!いやぁー読んでて楽しいです!更新頑張ってください! (2019年8月17日 1時) (レス) id: c4f6a2aaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛月りな | 作成日時:2019年8月5日 18時