one and only【佐野玲於】 (ページ2)

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Aside

｢Aちゃんって佐野くんの彼女なの？｣

そんな噂を耳にしたのは
高校に入学して1ヶ月と少し経った頃だった。

正直、私は悪い気はしなかったけど
玲於の耳にもそれは入ってたらしくて

｢え？…A？ただの幼なじみ。｣

放課後、人の少なくなった教室から
そうやって聞こえてきた玲於の声に落ち込む。

よく、片思いしてる時は
ちょっとしたことで嬉しくなったり悲しくなったりするとかいうことを聞くけれど

まったく、その通りだと思う。

少なくとも私は、
玲於の何気なく言った“ただの幼なじみ”という言葉に過剰反応し、
そのたった9文字の言葉に傷ついた。

そんなもんなんだ。
片思いってそんなもん。

私だってよく使う。
幼なじみって記号はこういう時に役立つ。

友達以上恋人未満のその範囲の中で、幼なじみという名前が私たちの間にはある。

なんならそれだけでもう十分だ。

幼なじみとして玲於の隣にいられるのであれば
このポジションは誰にも渡したくない。

玲於の大好きな漫画やアニメの話を聞いたり
玲於の友達のおかしな話を聞いたり
玲於の得意な先輩のモノマネを見てあげたり

その立ち位置は私でいい。

だから、気づかれなくていいんだ。
好きってこと。

今はまだ、幼なじみとしてそばにいれればいいんだ。

そんなこと思いながら今日も放課後、
玲於の話をBGMにゆっくり歩いて家に帰る。

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