総統閣下 ページ25
｢グルッペン、今日も探しに行くんか｣
｢当たり前だ。俺が助かったんだ。あの人もどっか吹き飛んでて生きててもおかしくない｣
あの戦争から1週間。グルッペンは、我々国の総統閣下となった。
だがあの日から、毎日あの鉄くずの周りにAがいないか探しに行っている。トントン、オスマンは止めはしなかった。自分が同じ境遇に立たされた時、自分たちは受け入れることが出来ず同じ事をすると思ったからだ。
最初の2日間はゾムも一緒に探した。
だが3日目で諦めた。元々親がいなかったため、いなくなった者はいなくなったとケジメをつけなければならないと言ったのだ。
去ったものは追わない。そう父から伝えられたはずなのにグルッペンは追わずにはいられなかった。
｢なあ、墓建てるんはどうや。あの場所に｣
｢父さんは生きている｣
｢お前……!!!｣
机をバンッと叩き、グルッペンの胸ぐらを掴んでゾムは声を荒らげた。だがグルッペンは動じることはなく、目の色一つ変えなかった。
｢お前いい加減にせぇよ!!!もうどんだけ探してもおらんねんぞ!!!!!認められへんのはわかるけど、もう現実見たらどうや!!!｣
怒鳴るゾムを無視し、新品の帽子をかぶり、新品のマントを羽織って今日もあの鉄くずの場所へと向かう。
あの時、自分を乗せてくれた馬に乗り、今日も鉄くずを見に行く。
1週間……流石にケジメをつけるべきだろうか。馬に揺られながら頭をぐるぐると回していると、あっという間に鉄くずへついてしまう。
馬から降りて鉄くずを見てもいつも通り。あの時と変わらない、黒い、焦げ臭い鉄くず。
と思っていた。
今日は違った。ひとつの鉄くずの上に、マントと帽子がかけてあった。間違えることはなかった。
｢父さん……!!??｣
探していた父のマント、帽子。何故かけてあるのか分からないが紛れもなくそれは父のもの。周りを見渡したが、それ以外は何も無かった。
だがこんな粋なこと、父親、A・フューラーしかいないだろう。
生きている。
それだけで十分だ。
｢もう大丈夫だ。希望がもてた。帰ろう｣
かけられていたボロボロの帽子とマントを身につけ、代わりに自分が身につけていた新品の帽子とマントを同じようにかけておく。
｢明日、もし無くなっていたら。それは風のせいか親父のせいだろう。帰るぞ｣
馬を走らせ、愛しの我が国へ向かう。
ふと後ろを見ると、マントがヒラヒラと手を降っているように見えた。それがなんだか嬉しくて。
｢元気にやれよ!我が父よ!!!!｣
父の真似事をした。
─翌日、鉄くずに帽子とマントはかかっていなかったという。
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はげわし(プロフ) - ルリさん» 返信遅くなってしまい申し訳ないです!続編出しましたので是非そちらからお父さんの今をご覧下さいー! (2020年4月19日 12時) (
レス) id: 4b2fabaa80 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - 感動して泣いてしまいましたっっ！お父さん生存だといいな…… (2019年12月1日 0時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
はげわし(プロフ) - snowさん» 呼んで頂きありがとうございます!お褒めの言葉とても嬉しいです(｀・ω・´) (2019年11月10日 21時) (レス) id: 4b2fabaa80 (このIDを非表示/違反報告)
snow - 最初面白いのに最後泣けるとか最高かよぉ…(ТДТ) (2019年11月8日 21時) (レス) id: a79ef504eb (このIDを非表示/違反報告)
はげわし(プロフ) - ライクさん» どうぞどうぞー!完成したら是非1度見てみたいですー! (2019年10月1日 23時) (レス) id: 4b2fabaa80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はげわし | 作成日時：2019年8月7日 17時
