Episode.524 ページ41
数日後、アインスの家に海軍が入り浸るようになった。母さんから聞いて知ったけれど両親が急に行方不明になったらしい
アインスはあの日以来、どこで過ごしているか分からない。恐らく能力を使って島の至る所を転々としているんだろうけど……
そのまま家に居たら良いのに、と言ったのを頑なに拒んだのは……海軍が来ることを知っていたから？
アインスは海軍に見つかる事を恐れている……？
……急に行方不明になった両親と、アインスの能力を結び付けると一つの仮説が思い浮かぶ
取り返しの付かないこと、って言ってた。けれど……まさか、本当に？
嫌な予感が頭を支配して、もしかして手を差し伸べたのは間違いだったんじゃないかと。でも、不可抗力だとか誤って能力を使ったとか……
自分のした行動を間違いだと思いたくなくて、必死に正当化しようとした
だって……今更、アイツを裏切れない
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次にアインスを見たのは、二週間程経った日の事だった
朝起きると枕元に手紙が置いてあって、多分夜の間に侵入したんだと分かった。南の方の海岸に来て欲しいって書いてあって、朝食を急いで流し込んで指定された場所へ向かった
「あ！居た！アインス！」
『どうしたの、こんな手紙置いて……と言うより、海軍の事とか色々聞きたい事が』
「二人とも！来てくれてありがとう、急に呼び出してごめんね
……色々聞きたい事があるのも重々承知なんだけれど、時間が無いんだ」
『時間が無いって？』
「もうすぐ、この島を出ないとなんだ。海軍の追手から逃れるのはこの島の中だけじゃもう限界だから……」
「え！？なに、お別れを言いに来たって事！？て言うか逃げるって……やっぱりアインス、なんか悪い事」
「……したよ。だから、君達に迷惑がかかるって言ったよね」
ぞくり、と背筋が凍った。アインスのいつもの穏やかな表情とは打って変わって、まるで別人のようだった
光の入っていない、ギョロっとした黒い瞳がこちらを捉えてきた。本能的に危険を感じて一歩後ずさる
この時、ようやっとあの時の判断を間違えたんだと実感した
「そういう話をしに呼んだんじゃないんだ、あのね二人とも……僕と一緒に来てくれない？」
『え』
アインスから言われたのは、思いもよらない提案だった
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作者名：鶯 | 作成日時：2023年1月6日 15時
