日常記録3【爆豪勝己】 (ページ13)

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日直ページ13

｢はよしろや｣

向かい合わせの机の反対に座る爆豪は、しかめっ面でそう言う

月に一度回ってくる日直で、今日は私と爆豪が担当だった

｢今書いてるじゃん｣

放課後、夕日の差し込む教室は他に誰もいなくて
二人の会話が終わってしまえば、カッカッとシャーペンの走る音だけが響く

貴｢……あのさ、そんなに見られてると気になるんだけど｣

爆豪からの鋭い視線に随分耐えていたけど、我慢できなくなって顔をあげれば、赤い瞳と交わった

そう言っても黙ったまま爆豪はジッと私を見てくるから、息がしにくくなって目を逸らす

爆豪とは席が前後だけど、こうやって日直をする時くらいしか話すことはほとんどない

もちろん、授業や訓練で必要最低限の会話はするけど、本当に必要最低限。

爆豪が無視するなら私も無視するしかない、ともう一度日誌に視線を落とす

すると机の背に持たれていた爆豪が身体を傾けて、机に頬杖をしたとき、フワッと甘い香りが鼻をくすぐる

急に近くになった距離に動悸が速まった

爆｢手ぇ止まってんぞ｣

そんな言葉にハッとしてシャーペンを握る力が強くなる

今まで爆豪のことをそんなふうに意識したことなかったのに、どうしてしまったんだろう

貴｢……先帰っていいよ、まだかかるし｣

爆｢ンのために待ってると思っとんだ｣

貴｢なに？｣

目を合わせたら今日の私はダメな気がして、垂れてきた髪を耳に掛けながら日誌を書き続ける

貴｢ッ……書けないんだけど｣

返事がないなと思ったら、爆豪の手がこちらへ伸びてきて、シャーペンを握る私の手を包む

爆｢こっち見ろ｣

いつもは聞かない声色だった
真っ直ぐで、どこか優しい

その声に身体は素直に言うことをきいてしまう

爆｢俺のこと、意識してンだろ｣

貴｢！…はっ？｣

まさかそんなことを言われるとは思わず、自分さえ気づいていなかった気持ちを、見透かされた気分だ

慌てる私を見て、爆豪はフッと鼻で笑う
その表情にまた心臓が跳ねた

貴｢別に…そんなんじゃ｣

爆｢バレバレの嘘ついてんじゃねぇ｣

貴｢っ……だったらなに｣

どうせ隠してもバレると思ったらもう開き直るしかなかった

爆｢そーなんの待っとった｣

貴｢へ…｣

そう言って不敵に笑う爆豪にシャーペンが手から離れて、その指を爆豪の骨ばった手が絡めとる

爆｢ハッ顔赤ぇ

そーやってもっと意識しとけ｣