日常記録3【爆豪勝己】 (ページ43)

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俯いた視線の先に爆豪の頭が見えて、ブランコを漕ぐ足を止める

爆「…ンだよ」

貴「なに？」

聞こえない、と問いかけながら爆豪を見る

私よりも背の高い彼の旋毛を見れたの初めてだな、なんて考えるくらいには酔いも冷めていた

爆「嫌いになったんじゃねぇのかよ」

貴「は…？」

爆「避けてただろ」

貴「そ、それは爆豪が私のことより周りのこと気にしてるから」

俺がガキだった、と顔上げた爆豪の赤い瞳と視線が絡む

青白い月の光を反射して揺らめくその赤に吸い込まれそうになる

爆「お前が俺ンとこから離れて後悔した」

貴「今更…」

真っ直ぐな瞳は私を映す

そんな視線を送られたら、自業自得だと言い返してやりたいのに言葉にできないじゃん

煮え切らないこの感情に胸がむずむずして、下唇をギュッと噛むと

爆豪の手が伸びてきて親指の腹で優しく拭った

時間が止まってしまったかのように、夏の虫の音も静まり返って、二人だけの空間に呼吸を忘れた

見つめあった視線の距離はゆっくり縮まり、そっと触れるだけのキスのあとに、啄むように角度を変える

まるで私がここにいるのを確かめるような甘いキス

唇が離れて瞼を開けると鼻先がくすぐる距離に爆豪がいる

骨ばった手を私の頬に這わせ優しく包み込んで撫でるから、私も擦り寄せるように委ねる

爆「好きだ」

目前で紡がれたその声色は優しくて、トクトクと胸が鳴る

貴「ふつう、順番逆」

爆「どっちにしろすンだから関係ねぇだろ

つーか、無駄な時間喰ったぶん取り戻す」

貴「取り戻すって？」

爆「こっからは我慢しねぇっつーこと」

立ち上がった爆豪は「帰んぞ」と私の鞄を持って歩み出す

貴「帰るってどこに？私の家そっちじゃない」

爆「俺ンち」

貴「え」

爆「気になる女、お持ち帰りすンのが合コンだろ」

振り返った爆豪は悪戯に笑うけど
あの頃とは違って大人びた表情は心臓悪い

貴「そっ、そうやって今まで女の子家に連れ込んでたんだ」

爆「テメェのこと忘れらんねぇで時間棒に振っとった俺の身にもなれ」

もう一度私の元に歩み寄ってきた爆豪は薄ら笑いで言う

目線の位置が逆転して、私が爆豪を見上げる体勢に

爆豪は少し腰を屈めて「覚悟しろよ」と耳許で囁いた

身体中が熱くなって思考が停止していると
それを見て満足そうに爆豪は再び歩き出した

女入れンのもお前が初めて、と玄関前で言ってくるから本当にこの人はずるい