偽装夫婦 ページ35
貴「なんでこんなことに……」
爆「引き受けたのテメェだろ」
今、私は一週間の潜入捜査に就いている。
チームアップは爆豪で、そこまではいい。否、よくない。
ろくに話も聞かず引き受けたこの任務は、ファミリー向けマンションに潜伏している敵の捜査で
あろうことか私は一週間爆豪と偽装夫婦として隣室で寝泊まりすることになった
貴「ていうか、爆豪こそよく引き受けたよね」
返ってこない返事を気にせず、大きなため息を吐きながらソファに沈み込む
雄英卒の私たちは顔こそ知っているものの、出会い頭に言い合いをするような所謂犬猿の仲だった
プロとして少しはお互い大人になったと信じたいが、そんな2人が仮にも夫婦役をするなんて当時の私に言ったら腰を抜かすだろう
爆「動いた、行くぞ」
盗聴器とカメラを確認していた爆豪が立ち上がるから私も慌てて鞄を取る
普段着で爆豪の隣を歩くのは物凄く違和感を感じた
爆「おい、もっと近寄れや」
貴「えっ？」
爆「怪しまれんだろーが」
買い物という体で調査対象の後ろを歩いていると爆豪がそんなことを言うから、任務中でも驚いてしまう
おずおずと肩が触れそうな距離まで近付けば
ったく、とため息まじりの声が聞こえて、宙ぶらりんの私の手を爆豪の骨ばった手が掬う
仕事で爆豪と恋人繋ぎをするなんて誰が想像しただろう
ビクッと身体が驚いて、爆豪の方に目をやれば、何事もないように歩き続ける
小声でここまでする必要ある？と問えば「今日の飯は」と躱された
私だけ変に意識してるみたいでムカついて、これは任務だと言い聞かせ「ハンバーグにしようかな」と空元気で答えた
結局怪しい素振りを見せなかった対象を監視しながら普通に買い物をして帰るだけの時間となった
夕方、家に帰って夕飯を作ったのは爆豪だ
ろくに自炊をしないから、机に並べられた料理を見て呆気に取られる
貴「才能マンなのは知ってたけどここまでとは……おいし」
さも当たり前に提供されたご飯を綺麗に食べきって、気持ちばかりにお礼として先にお風呂を譲った
爆豪がシャワーを浴びている間に対象が入眠したのを確認して漸く気を休める
ん...？この間取り、寝室一つしか……
そもそも任務だからっていい歳した男女がひとつ屋根の下って、事務所も何を考えているんだ
どうしたものかと頭を悩ませていたらどっと疲れがきていつの間にかソファで眠っていた
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作者名：桜羽 | 作成日時：2022年6月4日 21時
