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貴女side
夜食を終え、私は同僚たちと食器を洗う。泡に塗れた掌が、漸く最後の皿の一枚を洗い終えて、タオルで水を拭うと同僚の一人は微かに笑った。
「Aって本当は私達が仕える立場なのに」
「いえ。私はこれがあってます。義妹とはいえ、それは建前で、お二人の専属の世話役ですから」
「変に頑なだよねえ、Aってさ」
まあそれがあんたのいいところか、と同僚は快活に笑うと、菓子とお茶を私に渡した。
「坊ちゃんに持ってってやってね、A今日呼ばれたって聞いたし」
「はい。ありがとう」
いってらっしゃい、と笑われて私は小さく会釈すると廊下を歩いていった。
朔間くんの部屋はここから遠いわけではないから、軽くノックすると、「入っていいよ」といささか元気な声が聞こえた。
朔間くんはベランダで空を眺めていたようで、私が入ると活気が揺れる紅の瞳が私を捉える。
「遅かったねぇ」
「すみません、少し話してました」
「いいよ、あんたに友達がいるようでよかった」
文面は皮肉っぽいが、表情は柔らかく優しい。
「朔間くんも、楽しそうで良かったです」
「んー…まあね。まーくんもいるし?……嫌になっちゃうぐらい、楽しい」
「それは良かった」
朔間くんは素直じゃないっていうか。でも、優しい人だ。
朔間くんは、そんな私の顔を凝視して微かに目を背ける。
「あのさ、提案なんだけど、」
薄く形の良い唇がほのかに開かれる。
「…俺と同じ高校、行かない?」
「……え?」
朔間くんは、居心地悪そうに髪を搔き上げる。
「正直さぁ、心配なの、俺は。高校生活って女の華でしょ?行きたくないの?まあ、少し普通の高校とは違うけど」
「夢ノ咲…高校の」
「プロデュース科」
あっさりと言い放つ朔間くん。
「最近はライブが詰め込んでてあんずも忙しいし?まーくんや俺とか兄者以外にも、友達いた方がいいでしょ?」
「……」
「あとは、……おれ、は」
口ごもる朔間くん。
不審に思ったとき、朔間くんは顔を上げて苦笑いする。
「…おにーちゃんは心配なの」
「お兄ちゃんって、同じ学年じゃないですか」
「年齢は俺のが上」
「威張られる事じゃないですよ、尚更」
うーるーさーいー、と棒読みする。
「まあ、いいから来てよ…A」
望んでいいものじゃないと思ってた。
「……………はい」
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蝶遊(プロフ) - 私も推しが似てて嬉しいです〜! か、活躍…できる限り頑張りますっ!!笑 (2018年9月2日 7時) (レス) id: 231773e0eb (このIDを非表示/違反報告)
▼ 宮本 . △@ペアネβペア画中(プロフ) - 蝶遊さん» 来てしまいました~笑 推しが似てて嬉しいです..凛月くん人気!!!!!!!!! 今後の作者様の活躍を期待していますっ (2018年9月1日 19時) (レス) id: 7a40cd812c (このIDを非表示/違反報告)
蝶遊(プロフ) - ▼ 宮本 . △@ペアネβペア画中さん» わわ、こっちにも来てくださったんですね! なんか推しが似てますね…笑 コメントありがとうございます!! (2018年9月1日 19時) (レス) id: 231773e0eb (このIDを非表示/違反報告)
▼ 宮本 . △@ペアネβペア画中(プロフ) - うはぁぁぁ!!!!!!!!!歌い手小説からやって来ました(*''*) 推し…同じです!凛月くん~~好きや~~!!笑 (2018年9月1日 18時) (レス) id: 7a40cd812c (このIDを非表示/違反報告)
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