242話 君 ページ5
自分を形成する細胞達に絡み付く酸が落とせない。そろそろ誰かが来てしまうかもしれない。急かすために口の中に指を突っ込んでみる。
貴「んぐっ、う…」
濡れる指には透明の液のみ付着する。やけになって無理矢理奥にねじ込む。
「バカ、お前…それじゃあ駄目だろ。」
貴「んっ!?」
手首を掴まれ、口元から離されたかと思えばまた口内に侵入してくる。
背後から包まれるような体勢で顔は見えないが、その普通よりも高い体温でその正体がわかる。
貴「まっ、て…やら…んっ…」
「大丈夫だ。…ちゃんとあまり見ないようにしてる。」
耳元で優しく呟かれる。落ち着くように、あやすように。震えの止まらない体を温められる。
貴「ふっ、えぇ…」
腹筋がへこむのを合図に、すべてを吐き出した。
「…落ち着いたか。」
息切れをする自分に問いかける。
貴「…」
言葉を発したくとも喉の焼ける感覚を忘れられず出すことができない。
すると隣で蛇口が開く音がした。
「ほら、水。」
ひったくるように受け取ってしまったが変わらず心配そうに見てくれているのでなぜだか少し安堵の念を抱いていた。
「一応言っておくがトイレだーなんて、あんな嘘バレバレだぞ。」
小馬鹿にしたような含みのある言葉に今自分はムスッとした顔を見せたのだろう。彼はそれに少し微笑んでへたり込む自分の目の前にしゃがんだ。
「どうしたのか、話してくれるな？」
本当に真っ直ぐで、つい口から漏れてしまったくらいに裏の無い問いかけである。
自分は、この笑顔が失くなってしまうかもしれないと頭に過ぎった瞬間、どうしようもなく悲しくなって唇が震えた。
貴「…ヤダなぁ…君が死ぬのは…エース君…ヤダよ…守れるかなぁ…」
あぁ、柄にもない。
ぎゅっと鬱血するくらいに両の腕を握り締めてしまったが、彼は何も言わなかった。
ただずっとそばに居てくれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 67人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふいと - この作品大好きです (2019年5月6日 13時) (
レス) id: ec73fc1a8a (このIDを非表示/違反報告)
いちごミルク(プロフ) - 更新楽しみにしてます！ (2018年9月8日 23時) (レス) id: 74107eb362 (このIDを非表示/違反報告)
たけつき。(プロフ) - 森田菜々子さん» ごめんなさい小説製作は受け付けてないんです…自分で考えたやつじゃないと想像力が働かないところがあるので…本当に申し訳ございません。他の作者様方へお願いします。自分にリクエストしていただけたのは嬉しかったです。 (2018年9月5日 22時) (レス) id: d2d8bef1b4 (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - お願いあるんだけどいいですかな？ワンピース×メイ・チャンの恋愛短編集でお願いします。メイ・チャンは長男のグリードと次男のエンヴィーの妹を設定で (2018年9月2日 10時) (レス) id: e772f145ae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：脱兎狼 | 作成日時：2018年4月8日 15時
