【ONE PIECE】無気力系旅人の奮闘第5弾 (ページ45)

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234話足りないものはページ45

貴(家族ねぇ…)

湯槽に浸かり、体の冷えを落としゆくヘルメスは先刻の出来事を思い返していた。

この言葉には悩まされる事ばかりだ。というか悩んでしかない。

それよりも＿

貴「…可哀想って何だ…？」

…

マ「…お前、可哀想だな。」

…

あの表情は何だ。笑っている筈なのに笑っていない。あの目は何だったんだ。無性に悔しくて、哀しくて、心臓を掴まれたようで「やめろ」と叫びたくなった。両方の瞼が腫れるまで殴り続けたくなった。

自分は、力がある。見た目は悪くは無い。権力はそれなり。頭もそこそこ。本気出せば完璧になれる。

産まれて初めて感じた。これが劣情。

そんなもの無縁だと思っていた。自分には何もかもが備わっていると思っていた。奥歯を噛み締める。血の味が口内に広がる。

自分に足りないもの、愛されること、愛すること。

周りの人は皆いつも感情を見せていた。それは見せる対象が居るから。
自分だって、と、反抗してみるが「本当に？」と疑問で返される。執筆途中のヴァンダー・ヘルメスという物語の中、感情を見せたことなんてこの両手の指で数える程度にしか無い。

そもそも感情の理解ができない。喜怒哀楽。あとその他。自分の中から溢れたそれらはいつどれを表すべきか解らない。

これは劣情を知らずにいた事の代償でしょうか。

自身のしてきた罪への罰でしょうか。

頭まで湯に使ってみると苦しさが増す。小さい子みたいにお仕置きをされているような気分だった。自分には、誰も怒ってくれないから自分でするしか無いんだ。

…このままでいたら、どうなるんだろう。

コンコン、と扉を叩かれた。

イ「おーいヘルメス、着替え置いておくからなァ俺のだけど。あとマルコが呼んでるから早めにな。」

貴「あ…ども…」

返事が小さくなってしまったけれど聞こえただろうか。

…あの人(マルコさん)なら自分を怒ってくれるかな。劣情を知った今なら、理解できるんじゃないかな。教えて欲しい。感情の在り方を。

勢いよく立ち上がると少し眩む。瞬きをするといつもの世界に戻る。
用意されたイゾウさんの服はワノ国の物で、着方が解らなかった。胸元がわかりやすくなってしまうので男体化させる。うーんあまり似合わない…

髪は乾かさずに、靴の踵は潰して、服のはだけも直さず、とにかく速く。

扉を開けたら、拳が飛んで来た。