【ONE PIECE】無気力系旅人の奮闘第5弾 (ページ35)

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224話シオンページ35

カ「遅いのお…ヘルメス」

空が橙に染まり始める頃、一人呟く。

カ(どうせまた迷ってるじゃろう…)

カ「…迎えにでも行こうか。」

''剃''を使えばどんな広い市場でもすぐ見つかる。取得さえできれば便利なものだ。

窓を開け、バルコニーへ出る。
風は少し、ざわついていた。

カ「…」

貴「…あー…開けちゃいましたか…」

夕焼けの空の眩しさのせいでその黒い影はかき消されていたようだ。時々ヘルメスは本当にここに居るのかわからないように見えてしまう。幻影かと思ってしまう。

カ「ヘルメス…」

存在を実感したくて思わずその名を呼んだ。簡単に応えは来た。

貴「いやぁね、カクさんが開けずにいたら黙って行こうと思ってたんですよねー…」

カ「行く…とは？」

貴「…サヨナラですよ。」

逆光で表情はよく見えない。だけど少しだけ、少しだけ＿彼女は、笑ってるような気がした。

カ「そうか…あまり問題を起こすんじゃないぞ。」

貴「あれ、もっと引き留めるかと思いました。」

カ「うむ…立場上そうしなければならんのじゃが…お前のその顔を見て止められるような自分じゃない。」

貴「え、どんな顔してます？」

カ「そうじゃのお…」

ふわり、と包んだ彼女は思いの外小さく感じた。自分の行動に少し驚いたかのように口を少し開いた。
その艶のある黒髪を一束手に取り、口付けをする。

カ「思わず、こうしたくなる顔じゃな。」

上手く笑えているだろうか。この悲しみは隠せているだろうか。

貴「…っ」

こちらを見つめて固まる顔の赤はきっと、夕陽のせいでは無いはず。

カ「やはり…わしはヘルメスが好きなようじゃ！」

だからいつか、戻って来てくれる日まで＿