保健室 ページ37
大橋くんと昼休みをいっぱい使って話し込んだ。授業準備もしてなければ、また教室に戻る覚悟も決めてないけれど、気持ちはふわっとしたままだった。
｢ほら、チャイム鳴ったで｣
｢うん｣
｢……ここおれば？｣
｢…｣
｢流星が行くって言うなら背中押すけど｣
｢…いてもいい？｣
｢サイトウ先生が良いって言ったらな？｣
｢なにそれ〜｣
ここに来れば、こうやって甘やかしてくれる大橋くんがいる。それが学校にいる時の唯一の救いで、心の支えだった。
｢もう先生帰ってくんで｣
｢なんて言えばいい？｣
｢授業出たくないって｣
そんなの絶対あかんやろ、ツッコミもむなしく、その間にサイトウ先生が保健室に戻ってきた。
｢大橋〜気分悪くないか〜…って、今日は大西もおるんや｣
｢…あの、…授業出たくなくて、…ここにいてもいいですか｣
｢ちょっとストレートすぎるって！絶対大橋の言葉そのまんま言うたやろ｣
｢バレた｣
｢あの、…あの教室行くとお腹痛くなるから、｣
｢はいはいわかった、じゃあ腹痛にしとくから…大橋は、あんま1年に悪知恵教えんように｣
｢俺なんも言うてない！｣
今週何回目のサボりだろう。だけど今はそんなのいいや。
ほぼ大橋くん専用みたいな1番窓際のベッドに腰をかける。保健室らしからぬ雰囲気が好きで、それから大橋くんが登校する日は、必ずと言っていいほど保健室に足を運んだ。
＊
そんな1年前の記憶と思い出に浸る。
どうでもいいような、忘れてもなんにも困らないようなことなのに、どうして今も鮮明に思い出せるのだろう。
今日だってあの日のようにお腹が痛い。だけどもう、保健室には行かない。
大橋くんが卒業して、その年でサイトウ先生が異動になった。新しく入ってきた養護教諭は、若くてカッコよくて頼りになる、女子たちの注目の的で、保健室にはいつ行っても先客がいる。
｢…｣
大橋くんとサイトウ先生がいない保健室に、俺の居場所はなくなった。
保健室はみんなのもの。最初から俺の居場所なんかじゃない。
わかっているのに、この気持ちはなんなのだろう。今でもずっと、ずっと寂しい。
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ゆみ - いつもお話し楽しく読ませていただいてます。続編3にパスワード保護がかかっているのですが、そちらのお話もとても読みたいのでパスワードを教えてもらうことは可能でしょうか？ご検討よろしくお願いします。 (9月18日 10時) (
レス) id: e03a8ccf64 (このIDを非表示/違反報告)
ちらん(プロフ) - くろさん» 準備が整い次第、全体公開致しますので今しばらくお待ちください…！記載しておけばよかったです申し訳ないです(＞＜) (9月11日 5時) (レス) @page47 id: 833f0882ae (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - 続編の3について、パスワードを教えていただくことは可能ですか？？ (9月11日 5時) (レス) @page47 id: 548a30f309 (このIDを非表示/違反報告)
yuujun21(プロフ) - ちらんさん» ありがとうございますm(_ _)mお話のストックがたくさんあるとの事なのでそちら優先でも全然大丈夫です(*´ω｀*)更新楽しみにしてます♪ (9月6日 8時) (レス) id: f5e33b72b7 (このIDを非表示/違反報告)
ちらん(プロフ) - yuiyuikankanさん» リクエストありがとうございます！順番にお書き致しますのでしばらくお待ちください…！ (9月5日 20時) (レス) id: 833f0882ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちらん | 作成日時：2023年7月28日 23時
