夜桜を照らす月光

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noside

花輪が太陽が動けないようにしようとしていた時

その場に、六美が現れた



元々、彼らの目的は六美である

一般人の堅井を赴任させることで夜桜の指輪を一時的に孤立させ

その隙に既に指輪認証のセキュリティ情報を盗むことで


太陽をカードに本命の六美と人質交換を企んでいたのである





太陽は再び拘束され、顔を袋で覆われてしまった

そして六美と交換に、気絶させられ夜桜家に送り返されていく……









だがその様子を、天井のガラス越しに眺める一羽の鴉あり




＊＊




遠隔地にて零月は、任務を遂行しながら鴉に取り付けたカメラの映像を観ていた

端末片手に組織を壊滅させる辺り、流石元柱、夜桜家長子である



『ふふ、タンポポねぇ……今一番聞きたくない単語だ』




仮面奥の桜の舞う夜色の瞳を鋭く光らせ

零月はただ、愉快そうに笑っている


ただし、その胸の内には黒き業火が猛りながら


己の刃を研ぎ澄ませながら





『花輪、お前はとんだ思い違いをしているよ』





だがしかし、その中には「弟」への慈愛もあった

まるで、成長を喜ぶかのような…





『そもそも、太陽は地に根を張る花ではないよ』





刀に付いた血を払い、返り血の一滴すら付いていない姿で

かつての師より貰った桜の描かれた狐面を取り


その目を空へと向けた






『太陽はね、その名の通り“日輪”だ。地を、天を、花を照らし、育む陽光の源…』






空には雲がかかっているものの、その隙間から太陽が覗いていた


それは、かつて零月達がその手に握り、焦がれた光






『「花」などに収まる器ではないよ、太陽は

あの子は天空に燃ゆる日輪。私達夜桜を照らす、強き光の卵』






今はまだ、決してその光は強くない

だが、光は確かにここにあるのだ


夜桜の元で、輝きを増そうとしているのだ






『土俵が違うんだよ。太陽は、まず地にはいない。空にあるんだ

夜桜とて花。日輪無くして花は咲かない』






そう、太陽があるから桜は夜にも美しく咲く


本質から、そもそも違っているのだ


そして――――――





――――――太陽があるからこそ、月は光を放つ事が出来る





夜桜は夜の花。夜、天地を照らすのは日輪の光を受けし月


桜を育む日光が源と、その光を受けて夜桜を包み込む月光が源



それにより、夜の桜はより強く、より美しく



輝きを増し、儚さを捨て華やかに咲き誇るのだ

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