8.寄生虫 ページ9
「愛してる」と、その言葉を望んだのは自分だった。
それにもかかわらず、涙が出そうになるのはただ嬉しいからではない。
「私、を…？」
全身の力が抜け、その場にへたり込む。
そんな私の前に彼はしゃがみ込み、冷え切った私の手を包んだ。
「好きな女が他の男と寝るのは気に食わねぇんだよい」
言葉の意味が理解できず、ただ鼓膜を揺らす音のようだった。
クラシックのような、眠りに落ちる前に聞く子守唄のような。
形容する言葉はなんでもいい、ただそれが心地がいいことには変わりなかった。
「これからは毎晩ここに来ればいいよい。おれはお前を抱かねぇ。でも、お前が望むなら隣で一緒に寝るよい。どうだ？悪い条件じゃないだろい？」
笑顔を向けられて、私の目からとうとう涙がこぼれ落ちた。
悲しいのではないけれど、嬉しいからというのも少し違った。
私はただ安心したのだと思う。
何かに縋るようにして生きていた私を、見つけてくれる人がいてくれたことに。
体ではなく目的が別のところにある人と共に過ごす夜に。
「よろしくお願いします」の声が出ず、ただ首を縦に振る私。
メイクも落ちて、ぐちゃぐちゃな顔にも関わらず、彼はその雫を指で掬う。
それでも涙は止まらなかったけれど、彼は何度も何度も私の頬を拭ってくれた。
「どうして、私なんですか…？」
少し落ち着いて、ようやく振り絞った声。
伺う様に彼の顔を覗いてみると、なんとも楽しそうに笑っていた。
「おれはお前の笑った顔が好きなんだよい」
あぁなんともずるい笑顔だと、私はその時思わず笑ってしまったのだ。
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「ぱずる」(プロフ) - 福知さん» 福知さん、最後まで閲覧ありがとうございました！私の拙いながらの文章ですが、少しでも貴方様の力になれたのでしたら幸いです。また他の作品でもお待ちしております！ (2022年10月24日 0時) (
レス) id: 6f1abe1470 (このIDを非表示/違反報告)
福知 - なんだか救われた気分です。ずうっと圧倒されっぱなしでした... 素敵な作品をありがとうございました❤︎ (2022年10月23日 22時) (レス) @page49 id: ff0718d238 (このIDを非表示/違反報告)
「ぱずる」(プロフ) - ボンクラMONKEY ﾋﾟｰﾔの人さん» ボンクラMONKEY ﾋﾟｰﾔの人さん、最後まで閲覧いただきましてありがとうございます！また、こちらこそ素敵なコメントをありがとうございます。 (2022年9月23日 20時) (レス) id: 6f1abe1470 (このIDを非表示/違反報告)
ボンクラMONKEY ﾋﾟｰﾔの人(プロフ) - めっっっちゃ面白かったです。素敵な作品を、ありがとう。 (2022年9月23日 17時) (レス) @page49 id: 7a2b040506 (このIDを非表示/違反報告)
「ぱずる」(プロフ) - 西鶴さん» 西鶴さん、最後までご覧いただきありがとうございます！新作が出来次第、お待ちしていますので、またお越しください！！ (2022年9月16日 15時) (レス) id: 6f1abe1470 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：「ぱずる」 | 作成日時：2022年6月29日 2時
