6.そこのない壺 ページ7
「お前、最近鏡見てるか？」
震える私に投げかけられたのは、これまた理解できない言葉だった。
彼と私は、さっきから言葉を一方的にぶつけ合っているだけのようだ。
私が求める言葉は返ってこないし、彼が求めている言葉も私は返せていないのだろう。
「鏡くらい、そりゃあ…」
毎日見てますよ、こんな男だらけの船内でも毎日メイクしてるんだから。
「それなのにお前はお前を見て何も思わねぇのか？」
「何もって…」
何って何？
私の顔が醜いって話なの？
思わねぇのかって何。
そりゃ毎日醜いなって思ってるわよ。
だから毎日メイクしてるんじゃない。
そんなこと平気で言わないでよ。
「隈、酷くなってるよい」
「えっ？」
ベッドに腰掛けている私の前に、彼が膝をついて向き合った。
「もう毎晩男の部屋に行くのはやめろ。体がもたねぇよい」
彼の親指が私の目元を優しく撫でた。
思わず目を瞑ってしまった。
温かいと思った。
柔らかいと思った。
けれど私はそれだけでは満たされないのだ。
「体の前に、心がもたないんですよ…」
もう、一人で夜を越せなくなった。
もう、一人でベッドに潜ることができなくなった。
目を瞑れば襲ってくる漠然とした恐怖、「私は愛されない」という恐怖が、いつも私に張り付いて取れない。
「私に用がないなら、今晩は違う所へお邪魔してきます」
一人で眠る夜には用がないのだ。
早く見つけなければ、幻でもたった一晩だけでも、私を愛してくれる相手を。
それでも彼は私を諦めなかった。
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「ぱずる」(プロフ) - 福知さん» 福知さん、最後まで閲覧ありがとうございました！私の拙いながらの文章ですが、少しでも貴方様の力になれたのでしたら幸いです。また他の作品でもお待ちしております！ (2022年10月24日 0時) (
レス) id: 6f1abe1470 (このIDを非表示/違反報告)
福知 - なんだか救われた気分です。ずうっと圧倒されっぱなしでした... 素敵な作品をありがとうございました❤︎ (2022年10月23日 22時) (レス) @page49 id: ff0718d238 (このIDを非表示/違反報告)
「ぱずる」(プロフ) - ボンクラMONKEY ﾋﾟｰﾔの人さん» ボンクラMONKEY ﾋﾟｰﾔの人さん、最後まで閲覧いただきましてありがとうございます！また、こちらこそ素敵なコメントをありがとうございます。 (2022年9月23日 20時) (レス) id: 6f1abe1470 (このIDを非表示/違反報告)
ボンクラMONKEY ﾋﾟｰﾔの人(プロフ) - めっっっちゃ面白かったです。素敵な作品を、ありがとう。 (2022年9月23日 17時) (レス) @page49 id: 7a2b040506 (このIDを非表示/違反報告)
「ぱずる」(プロフ) - 西鶴さん» 西鶴さん、最後までご覧いただきありがとうございます！新作が出来次第、お待ちしていますので、またお越しください！！ (2022年9月16日 15時) (レス) id: 6f1abe1470 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：「ぱずる」 | 作成日時：2022年6月29日 2時
