七頁 不信 ページ9
『……』
言葉が出なかった
そこに映されていたのは私のお母さん
でも…
「なぁ…これでも"ええ人"って言えるんか？」
私の長い沈黙に侑が問いかける
『……ええ加減にして』
「は？」
『こんな虚像を見せて何したいん？』
「虚像と思ってんか」
『狐は人を騙す生き物や…信じられるわけないやろ』
そう、絶対に…
「……」
私が放った言葉に侑と治は哀しそうに笑った
何で…そんな顔すんの…
『…帰る』
声が震えた
「…さよか」
今度は制止の言葉を紡がずに頷く侑
治も同じく頷いた
二人が石段を指さす
「あそこ…降りたら帰れる」
二人の間を走って石段を降りていった
下に着いた時にふと足を止め後ろを振り返った
そこにあったはずの神社に続く石段は無かった
『やっぱり…信じられへん』
小さく呟いた言葉は誰にも届かないまま消えた
………筈だった
「…おい」
私の元に現れたのは幼馴染の倫太郎だった
「こんな時間に何してんの？危ないで」
『りん、た…ろ』
嗚呼…戻ってきた
大丈夫…あれは狐が見せた悪い夢なんや
「で、何してたん？」
『いや…何でもあらへんよ』
すぐに作った笑顔を貼り付けて答えた
それでも倫太郎にはいつも気付かれる
「何でもないって顔じゃないで、それ」
心配そうな様子で彼は私の頬に触れた
その手に私の手を重ねる
夜中の寒い気温の中でも彼の手は温かさを感じた
『大丈夫やで』
私が"大丈夫"、と言ってしまえば彼もこれ以上の事は聞いてこない
彼なりの優しさだった
「無理…するなよ」
ぽんぽん、と私の頭を撫でる彼
『有難うな…倫太郎』
とりあえず家に帰ろうと二人して歩き出した
その足取りはかなり重いものだった
『そう言えば…倫太郎もこんな時間になんであんな所におったん？部活…じゃないやろ？』
「ノート切らしたからコンビニに買いに行ってた…で、帰り道にお前が道のど真ん中でボーッと突っ立ってるから驚いた」
『そりゃすんません』
「心がこもってないぞ」
『バレたか』
「全く…一応女の子なんやからこんな夜中にもう
『一応て何やねん！列記とした女の子です〜！』
はいはい、と軽く流す倫太郎にちょっとムカつき
背中をバシッと叩いてやった
そんな事をしながら歩いていると家が見えてきた
さっきまでの事もあり少なからず動揺はしていた
『あ…じゃあ私はこの辺で』
「ん、じゃあな」
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迦楼羅(プロフ) - 湯たんぽさん» コメント及び応援のお言葉誠に有難うございます！不定期更新で申し訳御座いません！ (2018年3月4日 23時) (
レス) id: b24814f2bb (このIDを非表示/違反報告)
湯たんぽ - これからも頑張って下さい応援してます！！ｖ（＾＿＾ｖ）♪ (2018年2月17日 3時) (レス) id: e17635b3c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：迦楼羅 | 作成日時：2018年2月9日 6時
