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「ところでAちゃん、オートロックの家でとってもオススメがあるんだけど見てみない?」
『へ…?出来れば!是非!早めに!』
ありがたい提案にここぞとばかりに食いつくと、中村さんはまたクスクスと笑った
「ここなんだけど、ちょっと見ていく?」
それなりの階層があるマンションでオートロック完備
家賃高そうだな、なんて一瞬たじろいだけれど自分の預金残高を思い出して家賃の心配はいらないか、と考え直した
『ここ…勝手に見ていいやつですか?』
「良いよ、俺ん家だから」
『あぁ、やっぱりそうですよね』
マンションの1室に案内されるまでの道のり、オートロックの鍵もエレベーターも手慣れた手つきでエスコートしてくれる中村さんに、もしやと思っていたけれど
部屋に入った後で2人きりの状況に良いのか悪いのかぐるぐると考えが巡る
「部屋見てみなよ、そんなに広くは無いけど住み心地は良いんだよ」
ほら、と部屋の案内をしてくれる中村さんにさっきまでの緊張は吹き飛んで、思考は物件を吟味する方向にシフトチェンジしていた
『ここ、めちゃくちゃ良いですね』
「そうなの、そんなに高く無いしね」
『うわぁ…それは魅力だ』
「良ければ大家さんに空いている部屋聞いておこうか?」
『良いんですか?是非!お願いします!入居はいつでも…何なら明日でも大丈夫です!』
引っ越し先が決まるという安心感と高揚感に興奮気味に答えた私に、クスクス笑っていた中村さんは
掌を私の髪を撫でる様に添えて
「明日聞いておくね」と微笑んだ
その仕草と表情に身体中の熱が顔に集まった様な感覚に襲われる
「顔、真っ赤だよ」
『…中村さんの扱いが紳士すぎて…慣れなくてちょっと…』
「そう…嫌?」
『嫌では無いんですけど…その、フェロモンが過多すぎるというか…』
そこまで言い終えると艶っぽい潤んだ瞳をこちらに向けていた中村さんが急に吹き出して笑い始めた
「あぁ、もう…今日はやめとこうか
一緒にご飯でも行く?」
さっきまでの雰囲気を察するにやめとくとは何を?とは聞けず、ご飯の誘いを喜んで受けた
中村さんは近所に美味しい所あるから、と来た時と同じ様にまたエスコートしてくれて
家を出て少し歩いた所の居酒屋に入った
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作者名:村民 | 作成日時:2023年2月17日 17時