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病室のカーテンの隙間から漏れる月明かりにAの顔が照らされる
『んー…?』
まだ目も開けていないのに眩しそうに顔を顰めて、Aの手が顔を覆った
『あたま痛っ…』
二日酔い?と惚けた事を口にしながら寝ぼけた目を薄らと開くと、眩しい!と再び目を閉じる
今度は月明かりを直視しない様に目を開け痛む頭で考えを巡らせた
ここがどこで何故ここに居て今が何日の何時なのか
殴られて病院に運ばれたんだという事を思い出し、スマホで日時を確認しようとするも近くには無い
近くのテーブルに無造作に置かれた鞄を見つけて立ちあがろうとした時、Aの視界が歪んだ
『フラフラする…』
きっと立っちゃダメなんだ、と思い直したAは
気になる事が多すぎてもう1度眠る気分にもなれず申し訳無さそうにナースコールを押した
「Aさん?!すぐに行きますから動かないでくださいね!」
ナースコールからはそう声が聞こえて慌てて座っていた状態から横になる
「うん、今の所意識もハッキリしているし記憶も大丈夫そうだね。明日細かい所の検査をするから、それまでは立ったりしない様に」
夜間だったが医師はすぐに来てくれて、刑事さんにも連絡を入れるよとだけ伝えられた
『立っちゃダメなら鞄取ってもらえませんか?ごめんなさい』
「ダメですよ、安静にして寝ててもらわないと」
40代くらいの看護師に軽くお叱りを受けたAは日時だけでも教えて欲しい、と頼み今があの日から2日後の23時だという事を知った
『中村さんとの約束、昨日だ…すっぽかしちゃったな』
デートだと言われて内心浮かれていたのだろう、ガッカリという気持ちと申し訳なさでいっぱいになった
連絡もきっとついていない心配をかけているか激怒しているか、どちらにしろ最悪だとAは思う
『ドーナツ買いに行かなかったら良かったのかな…そうだ、ドーナツ!』
辺りを見渡してもドーナツのお持ち帰りボックスは見当たらない、Aは大きなため息を吐いた
『…退院したらまた買おう』
ぼそっと呟くと目を閉じて少し考え込む
Aを襲ったあいつがあの後どうなったかをAはまだ知らないが、病院に居るという事は今は安全だろうと思うと少し安心したのか再び眠りについた
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作者名:村民 | 作成日時:2023年2月17日 17時