縁側の幸せ2 (ページ10)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:12,190 hit

59 ページ10

No side〜

「落ち着いた？」

優しく問いかけながら手渡されたコーヒーを手に取り、少し落ち着きを取り戻したAがポツポツと事情を話し始める

地元でストーカーにあって訴えたかったのに
それを許される環境ではなかった事
家族すら自分の味方ではなかった事
元カレの一言で全てから逃げたくなった事
お金で解決する道を選んだ事

Aが話している間相槌を打ちながら目を逸らさずに話を聞く、その優しさにまた涙が溢れてくる

『さっきフロントから電話があって…中村って名乗って部屋に上げるように…中村さんと一緒に居る所もきっと見られたから…それで、名乗ったんだと思います…』

『フロントマンにはストーカーだって伝えて、大丈夫だって言い聞かせてた時に部屋のベルがなったから…もしかしてって…怖くて…』

『地元の時はホテルの人も助けてくれなかったから…』

啜り泣きながら言葉を紡ぐAの隣に座り、手を摩りながら倫也も口を開く

「電話したんだけど繋がらなかったから、心配で来てみたんだ。…そしたらフロントで揉めてる人が居て、あんまり気にせずにそのまま部屋まで上がってきたんだけど
…タイミング悪かったね。ごめんね」

『中村さんは悪くないです…謝らないでください、来てくれてとても嬉しいです…東京に引っ越してきて…最初に中村さんと出会って、ここでなら楽しくやっていけると思ったから…』

「そう言ってもらえると嬉しいよ、俺もAちゃんと居ると楽しいから…でもさ、結構手段選ばずにって感じの人みたいだから、このまま近くに住むのは怖くない？」

『それは…怖いですけど、どこに逃げても意味が無いのかなって思うんです。だから…自分が好きな場所に居たいんです』

そう言ったAの手を軽く握りニコリと笑う倫也

「そっか、俺の近くが好きな場所なんだねぇ」

ふざけた様にそれでも優しく微笑みながら言う倫也にAの顔は赤く染まっていく

「それなら家も俺の隣で問題ないね？」

一段と笑みを深くした倫也がそう告げると、席を立ち賃貸仮契約書等の書類を鞄から出して淡々と説明を始める

『あの…！急すぎて…展開についていけてないです！』

驚きと恥ずかしさに呆気に取られていたAの正面に座った倫也はニコリとした笑みを崩さない