縁側の幸せ

18 ページ18

退院の日、病院まで迎えに来ると家族に言われたけどそれも断った

誰にも会いたくない、その気持ちが強かったから


病院を出てタクシーに乗ろうとすると、見覚えがある男


「退院おめでとう」


花束を抱えたあの男は笑顔で近づいてくる


もう2度と近寄らせない、その約束は早くも破られた。逃げたいのに逃げられない
どうして退院する日も時間も知っているのか


誰かが教えたんだろう、でも誰が？
疑わしい人間なんていくらでもいる
数日前まで好きだったこの地元が、ここに住む人達が、大嫌いになった



「ほら、一緒に帰ろう？」


手を繋がれる、咄嗟に払いのけた


『もうやめて、あんたなんか嫌い！気持ち悪い！』


勢いに任せて叫ぶと、あの男から笑顔は消えて冷たい目で睨まれる


怖くなってそのままタクシーに走った



「いつだって見てるからな」



タクシーに乗り込む前に聞こえた声
怖くて震える体を抑えながら、どこにも行く所は無く普通のホテルだとまた見つかるかも、と怖くなってラブホテルで1日過ごした



その次の日、貰ったお金と少しの荷物を持って東京へ出て来た
飛行機も偽名でチケットを取り、帽子とマスクで顔を隠して知り合いに会ってしまわないように注意した



それからはホテル住まいをしながら家を探して買って、今に至る




『やっぱり怖い』

19→←17

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す