29話 ページ31
それは、過去の話か。
経験上、なんだろう。
乱)「ボクは男の子だし、フリフリな服とか好きだけど、触られるのは気持ち悪かった」
目をつぶりながら、話す。
自分で自分を抱きしめながら。
乱)「嫉妬だって、された。可愛いからって、殴られたりした。…金儲けの道具にだって、された事もあったよ」
鶴丸が、驚いた顔で乱を凝視してる。
…知らなかったのだろう。
乱)「でももう終わった事だから、もういい」
だからか。
妙に大人っぽくて、疲れた顔をしてたのは。
乱)「…あんたは、こんな話をしても鶴丸さんみたいに同情すらしない」
うん、しないよ。
”可哀想”なんて、見下してるみたいだし。
乱)「ボク、あんたの…Aのそーゆー所。信用できる。ボクをボクとして見てくれてるAを」
パチッと目が合った。
それからジッと見てくる。
あ)「…正直、鶴丸も乱も。…”付喪神”なんて言われても実感ない。人にしか見えない。だからじゃない？私から見た乱は、ただの”生意気”だから」
ニッと笑って見せる。
乱は目を見開いて、横を向いてしまった。
あ)「になさ、泣いてんの？」
いつの間にか、この部屋には2人しかいない。
鶴丸は気を利かせてくれたんだろう。
私もゴロンと寝転がる。
乱)「…うるさい」
その声は涙声で、肩だって震えてた。
あ)「えー、今なら胸貸してあげたのになー」
乱)「…だれが。そんな胸にたよるか」
あ)「なんだって？喧嘩なら買うよ」
乱)「ボク、喧嘩なら強いよ」
だけど、と。
乱は話を続け、ゴロンとこっちを向き…抱きついてきた。
乱)「…今だけ、使ってあげる」
あ)「…生意気」
乱の髪を撫でる。
柔らかくて、サラサラ。
多分。
私達は初めて打ち解けた。
なんの警戒も気遣いも探りもなく。
…本当の”友達”になった。
鶴)「…ウメ。お前の孫は…立派になったな」
Aと乱がくっついたまま眠る。
それを予想してたかのように、毛布をもってきた鶴丸。
鶴)「…ウメの若い頃そっくりだなぁ」
強引な所も、優しい所も、笑った顔も。
所々垣間見る”ウメ”の名残りに、愛おしく感じる。
もしも自分が人間で、旦那より先に会ってたらどうなってただろう、と。
昔、ウメに質問したことがある。
答えは…”それでもやっぱり国永は友達で…あの人とは夫婦だったと思う”と言われた。
絶対に、好きになってもらえなかった。
それでも、側にいるだけで幸せだった。
鶴)「…涙脆いなぁ」
まだ、どこかで。
君を探してる。
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作者名：なーこ | 作成日時：2017年3月6日 17時
