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54話 ページ24

今のは言わなくてよかったんじゃない?
ってぐらい、わざと予定を伝える女に、引いた。

そこまでする必要、ある?

あ)「…雅人さんと私が付き合っていた事は知ってましたか?」

「いいえ、でも昨日聞きました」

あ)「それで、どう思いました?」

「特に」

あ)「は?」

「雅人さんに彼女がいらっしゃっても、いらっしゃらなくても、結局は私と結婚するんですもの」

だから、特に何も思いませんでしたわ。
と。

女は言い放った。
…もう、見てられない。

これ以上津野崎が口を開いても、余計に惨めになるだけに思えた。
とりあえず、ベルを鳴らしお会計を済ませる。

それから、3人がいる席に近づいた。

パシン。

その音で、騒がしかった店内はピタリと音がやみ。
一斉にそこを見た。

至)「…あのバカ…!」

あ)「…最低」

「どうぞ。貴方がそれで気がすむのでしたら」

殴ったのは、津野崎だった。
彼女の手は、フルフルと小刻みに揺れている。

殴られた方は、表情を変えることなく言い放ち。
女の言葉にカッとした津野崎は、もう一度殴ろうと手を挙げた。

至)「そこまで。A、ダメだよ」

俺は津野崎の手を掴み、それから自分の元に引き寄せた。

あ)「…っ離して!離してよ!」

至)「すみません、お騒がせしました」

俺はお得意の営業スマイルで周りに謝り、それから西崎さんを見た。
最後まで黙ったままの西崎さんに、文句でも言ってやりたかったが。

それよりも津野崎を押さえ込むのに精一杯だった。

あ)「…っこんな女!大嫌い…っ!」

至)「はいはい、行くよ」

津野崎を抱えそのまま外に出た。
…あのカフェには二度といけないな。

まぁ行く気ないけど。
店を出て、少し出た頃にはもう津野崎はおとなしくなっていた。

大人しく、泣いていた。
俺は特に慰めることもしないで、適当に歩く。

…歩きたかったんだけど、どうやら本当に限界らしい。

至)「…津野崎」

あ)「……何」

至)「限界」

あ)「え?え、ちー?ちー!」

俺はその場で崩れ落ちて、そのまま意識を飛ばした。




目が覚めた時、見覚えのある天井をしばらく眺めた。
ここは、多分津野崎の家だ。

あ)「ちー?目、覚めた?」

至)「あー、うん」

あ)「熱は?…まだちょっと熱いかな。はいこれ、脇の下に入れてね」

至)「ん」

さっきよりだいぶマシになった。
けど、やっぱり体がはだるい。

至)「…ごめん」

ここまで、どうやって運んでくれたのか知らないけど、大変だった事は確かなはず。

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作者名:なーこ | 作成日時:2019年1月17日 22時

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