48話 ページ18
駅へ向かう道を、お互い無言で歩く。
道を走る車が、濡れた道路を走る音。
その光が俺達を映し、遠ざかる。
微妙な距離感で並んで歩く俺達を、どう思ってるんだろ。
そんなどうでもいい事を考えていた。
あ)「………ちーは、私が好き、なわけじゃないよね」
いきなり話しかけてきて、びっくりした。
俺が津野崎を見ると、津野崎は反対側の家を眺めていた。
至)「…まぁ」
好き、ではないと思う。
抱きしめたいと思ったし、キスもしちゃったけど。
強いて言うなら、友達以上恋人未満、的なアレ。
至)「えーっと、…ごめん。なさい」
あ)「…謝らないで、ちー。流された私も悪い」
そう言って、ようやく津野崎はこっちをみた。
目の周りは赤く、泣いたってわかる目をしていた。
あ)「ちーみたいなイケメンとキスできてラッキーだよね、私」
へへ、っと。
何でもないように笑った。
…笑うなよ。
無理して、なかったように茶化すなよ。
あ)「あーあ。私って世界一幸せな友達もったよね〜。こーんな、慰めてくれる友達がいてさぁ」
んーっと、わざとらしく伸びをして。
俺よりも少し前を歩いた。
至)「それ、やめてくれる？」
あ)「何がー？」
至)「わざとらしく平気なふりするのやめて」
あ)「平気なふりって、私、ふりじゃないよ」
至)「A」
髪がフワッと浮いて、振り返った。
その目に涙が浮かび、流れる。
至)「嫌だったなら言ってくれたらいいじゃん。何平気なふりしてんの？アレは俺のせいにしていし、お前は何も悪くないよ」
あ)「…っちが…」
至)「違わないよね、現に今泣いてるし。…本当ごめん」
あ)「違う！」
津野崎は、俺の前に立ち腕を掴んだ。
あ)「…っ違うの、ちー。……私、最低なの」
至)「…何が？」
あ)「あ、たし、…あの時ちーならいいかなって思った。雅人さんの事全部忘れて、もっとしたいなって思っちゃった……気持ち悪いよ、私。最低だ」
友達なのに、と。
そう言って俯いた。
…こいつは、俺をどうしたいわけ？
俺に弁解なんかして、どうしてほしいんだよ。
あーもー。
面倒くさい事嫌いだって言ってるだろ。
至)「お前、俺が好きなの？違うよね」
あ)「…分かんない。ちーはかっこいいけど、雅人さんしか見てなかったから…」
至)「俺も。ニナしか見てこなかったから、お前が好きか分かんない。けど俺は、お前とキスしたいと思うぐらいには、好きだよ」
失恋の傷は新しい恋で埋めればいい。
昔、姉が言ってたのを思い出した。
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作者名：なーこ | 作成日時：2019年1月17日 22時
