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43話 ページ13

最後の砦に、今電話をかけている。

プルルルル

サンコールめで、はい、もしもし。と声がした。

至)『もしもし、俺。今大丈夫?』

あ)『ちー?うん、平気』

至)『今週の土曜って何してる?』

あ)『何で?』

至)『いいから。暇?』

あ)『うん、暇は暇かな』

問題は。
津野崎が頷いてくれるかだよね。

…西崎さんも来るし。
ってか、もしかして西崎さんに誘われてたりして。

至)『実は会社で合同の食事会があるんだけど。それに同行してくれないかなって、思って』

あ)『…食事会?』

至)『そう。…どう?』

津野崎は数秒黙ったのち、いいよと言った。

至)『…実は、西崎さんとの会社、なんだけど…』

あ)『…え?』

至)『大丈夫、そう?』

あ)『………』

あー、これで断られてもしょうがないよね。
そしたらまぁ、監督さんに頼みこもうかな。

あ)『雅人さんが、』

至)『ん?』

あ)『土曜日は、予定があるって言われたの』

至)『…うん』

あ)『どうして誘ってくれなかったんだろう』

今度は、俺が黙る番だった。
津野崎が今、どう思ってるかなんてわからない。

声だけじゃ、わからない。
もしも泣いているのなら。

…可哀想だと思った。
あの部屋で1人、泣いてる津野崎を想像したら。

抱きしめてあげたいと、思った。

あ)『…いいよ、行く。ちー、土曜日宜しくね』

至)『こっちこそ、よろしく。引き受けてくれてありがとう』

津野崎との電話を終えた後。
俺は少しだけ、憂鬱なのが減っていた。

津野崎が、1人。
腹を決めてたとは知らずに。

あ)「…確かめなきゃ」




ニ)「天馬、通ししたいから付き合って」

皇)「はいはい」

ニ)「十ちゃん、いってらっしゃい〜」

十)「あぁ。行ってくる」

朝食を食べながら、思う。
…いいよなぁ、学生って。

ニナも天馬も学生じゃないけど。
今も寝てる万里は、今日はニ限からとか言っておきてすらこない。

2人の会話をぼんやり聴きながら、思った。
本当に好きな事を職に出来た天馬もニナも。

心の底から羨ましい。

ニ)「なぁに、たるたる〜」

至)「2人の職業が羨ましい」

皇)「至さんも俳優になりたかったんですか?」

至)「そうじゃなくて、2人とも本当に楽しそうだから」

ニナと天馬はキョトンとした顔をして、それからお互い顔を見合わせた。
何言ってんだ、コイツ。

と言わんばかりの顔だった。

ニ)「…夢、だったもん」

皇)「まぁ、俺は両親の影響もあるけどな」

…夢、ね。
堂々と語る2人は眩しかった。

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作者名:なーこ | 作成日時:2019年1月17日 22時

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