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41話 貴方side ページ11

幸せ。
って何?って聞かれたら。

私は今だって答える。
ありきたりだし、そう答える人はこの世界で何百人かは言うだろう。

だけど私は今、この瞬間。
雅人さんの腕の中にいる事が本当に幸せで、幸せすぎてどうにかなりそうだ。

他はどうだっていい。
全部あげるから。

だから、お願いします。
どうか私から、この人を奪わないで。

お願い。
なんだってするから。

雅人さんは、大きな猫みたいだ、とか言って私の背中や頭を撫でた。
その綺麗な指が私を撫でたと思うと、その部分だけが熱を帯びる。

私の心音は高まるのに、彼は穏やかに波打つ。
それが憎らしく、それから愛らしい。

好きってこんなだった。
いや、もう彼が愛おしいって思うから。

これは愛かもしれない。

あ)「ねぇ」

西)「何?」

あ)「ご飯、何がいい?」

西)「お昼?」

あ)「うん」

西)「んー………、パスタ、とか?」

あ)「何系?」

西)「トマト」

お互いの顔は見えない。
それでもこのゆるい会話は、彼の表情まで見える気がした。

もう少し堪能してたかったけど、お腹の方が耐えられないみたいで、仕方なく台所に立つ。

もっと、くっついてたい。

料理を作りながら、彼がソファーで座ってるのが見える。
それが嬉しくて、もっと見ていたくて。

たまに交わる視線に、ときめいていた。
胸がキュンっとなる。

年甲斐もなく、10代の頃のようにはしゃいでしまう。

出来たパスタを、上品に。
だけど少しがっつきながら、美味しそうに食べる彼をずっと見ていたいと思った。




ベッドに2人で横になって、ぼんやり天井を眺める。
身体が火照ったようで心地よい温かさが、眠気を誘う。

西)「眠い?」

あ)「少し…」

西)「いいよ、寝て」

今日は特別に甘い。
それがまた嬉しくて、雅人さんに擦り寄る。

彼の体温を感じてるうちに、ウトウトしてきた。
加えて彼が私の髪を撫でるから、完全に瞼が落ちてくる。

あ)「ーー何処にも、いかないでね」

西)「…うん」

微かに聞こえた声に、私は安心して眠りについた。






あ)「…嘘つき」

夕方、私は目を覚ました。
隣にいたはずの彼は何処にもおらず。

ただ、裸の私がベッドで1人、残されていた。
呆然とする中、ゆっくりと沈んでいく夕日が、部屋をオレンジに染めるから。

何故だか昔の事を思い出した。
まだ、小学生だった頃。

一人で帰った、あの帰り道の時の事。
置いてかれたのか、たまたまか。

心に穴が空き、息が苦しくなった事を、思い出した。

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作者名:なーこ | 作成日時:2019年1月17日 22時

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