6話 ページ7
彼女が何を話すのか分からなかったけど。
その切り出し方は、妙に力がこもっていた。
…何。
彼女の緊張が、こっちまで移る。
急にしおらしくなり、女の子、みたいになった。
この反応は、見覚えがある。
…なんだ、そう言う事か。
いきなり会いたいとか言ってきた辺り、怪しいと思ってたんだけど。
面倒くさいなぁと、本格的に思う。
こんな事だったら、監督さんのカレーを食べてた方がよかったんだけど。
ため息つきたいのをこらえ、彼女が切り出す言葉を待つ。
彼女は決心したように大きく息を吐き、こっちを向いた。
あ)「私…結婚するの」
至)「は？」
あ)「正確には、結婚するかもしれなくて、」
予想外の答えに、頭が追いつかない。
え？結婚？
こいつ、結婚すんの？
ってか、彼氏いたんだ。
よく見ると、津野崎の左手には指輪がはめられていた。
なんで気づかなかったんだろう。
あ)「あ〜、やっと言えたー！」
ほんのりと頬を赤く染め、恥ずかしそうな、でも幸せそうに笑いながら顔を仰いでいる。
…あぁ、うん。
今の俺、すごいイタイ奴じゃない？
勘違い乙。
うーわー、恥ずかしい。
これは、素人プレイヤーに負ける並みに恥ずかしい。
死ねるわ、コレ。
一人心の中で悶えながら、必死で営業スマイルを作り上げる。
至)「へぇ。おめでとう」
くらえ。
たるちの極上スマイル。
あ)「ありがと、ちー」
ゔっ。
津野崎の笑顔に、100ダメージ。
あ)「まだ先なんだけど、ちーには知らせたかったんだ」
至)「…俺？」
あ)「そう。結婚するってなって色々考えた時に、ちーの顔が浮かんでさ。あぁ、会いたいなぁって思ったの」
心残りなんだと思う。
と、困ったようなはにかみ方をした。
心残り、か。
…俺は今まで、こいつを思い出した事があったっけ。
一回もない。
この前会うまで思い出さなかったし、もう二度と会わないと思ってた。
あ)「私、へんな時期に転校してきて、変な時期に転校したでしょ？あの中途半端な時間で、一番仲良かったのは、ちーだったから」
ゴクリ、と。
手元にあった生を一口飲んだ。
…ぬるい。
あ)「あの時、私、ちーが好きだったんだよ。ま、ちーはあの通り暗かったし、色恋嫌いだったから、すぐに諦めたけどね？」
至)「…そうなんだ」
あ)「うん。だからちーは、私の青春の一部だよ」
好きだった、なんて。
全く気づかなかった。
俺が嫌う中学時代を、こいつは俺が青春だったと言い切った。
…なんだか、すごく虚しくなった。
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なーこ(プロフ) - まるさん» 見落としてました…。すみません、気をつけます (2018年10月9日 12時) (
レス) id: bce89ec21f (このIDを非表示/違反報告)
まる - 作品を作る前にルールをしっかりご確認下さい。オリジナルフラグをちゃんと外して下さい (2018年10月9日 11時) (レス) id: 07f23207a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なーこ | 作成日時：2018年10月9日 9時
