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5話 ページ6

津野崎が予約していた店は、お洒落なbarでも安いレストランでもなく。
本当に丁度良さそうな、居酒屋だった。

程よく綺麗で、程よくうるさい。
それから何より、個室なのが有り難かった。

…こんな所を、会社の人に見られたくないし。
説明が面倒くさい。

あ)「ちー、何にする?あ、飲み放題はつけよ」

至)「それは任せる」

あ)「んー…あ、私アセロラハイボールにする。ちーは?」

至)「ハイボール、飲むんだ」

あ)「変?」

至)「変ってより、違和感。あ、俺は生で」

あ)「コーラーじゃなくていいんだ」

クスクスと。
子供が悪戯をしたような笑い方をした。

だからびっくりして凝視してしまう。
さっきまで、お酒を飲めるようになった事に時の流れを感じていたが。

今、目の前で笑うこいつは紛れもなくあの頃の津野崎だ。
…何だか、調子狂う。

至)「…いつの話だよ」

今でもコーラーは好きだし飲むけど。
それをこいつに言った所でどうでもいい話だし、黙っておく。

あ)「食べものは?」

至)「とりあえず、唐揚げ」

あ)「とりあえず、ね」

至)「何?」

あ)「…懐かしなぁって、浸ってただけ」

目を細め、微笑んだ。
微睡みの中にいるような、まったりとした笑い顔。

…やっぱり綺麗になったな、なんて思ったりした。



あ)「で、ちーは今あの会社で働いてると」

至)「そう」

あ)「この前は、会社の飲み会って所ね?」

至)「うん」

俺は今、決してコミュ障を拗らせてるわけじゃない。
相槌しか出来ないのは、こいつが永遠話してるからだ。

あ)「あ、そう言えば。中学のエミちゃんと森田くんが結婚したらしいよ」

至)「…誰?」

あ)「覚えてない?ま、兎に角。同級生でも結婚するんだねーびっくりしたよ」

至)「そりゃするでしょ。俺らもう25だし」

あ)「歳だねぇ」

一瞬、中学の話が出て体が強張ったのがわかった。それが津野崎に伝わったかは知らないけど、話を逸らしてくれた事にホッとしてる。

…黒歴史。
中学の事なんて思い出したくもない。

だから有り難い反面、津野崎自身にも引け目を感じた。

あ)「ね、ちーは彼女いないの?」

至)「いないかな」

彼女になって欲しい奴ならいるけど。

あ)「へー?ちーなら誰でも選べそうなのに」

至)「ないない。俺を過大評価しすぎ」

あ)「ちーは昔から、自己評価低いよね」

至)「津野崎は、昔から高かったけど」

ネカディブな俺に、よく付き合ってられたよなーと
今更ながら感心する。

あ)「…あの、さ」

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なーこ(プロフ) - まるさん» 見落としてました…。すみません、気をつけます (2018年10月9日 12時) (レス) id: bce89ec21f (このIDを非表示/違反報告)
まる - 作品を作る前にルールをしっかりご確認下さい。オリジナルフラグをちゃんと外して下さい (2018年10月9日 11時) (レス) id: 07f23207a7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なーこ | 作成日時:2018年10月9日 9時

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