溺れた魚

29話 ページ30

あの後、適当な言葉を交わし、家に帰る。
それまで、兼定くんと骨喰くんにコンタクトを試みた。

あ)「骨喰くんは、厚の兄弟なんだよね？」

骨)「あぁ、そうみたいだな」

あ)「やっぱりわからないもんなの？」

骨)「…なぁ」

隣にいた、骨喰くんがいきなり止まった。
びっくりした。

骨)「ほっといてくれ」

あ)「お、おう」

骨喰くんは、スタスタと前を歩き始めた。
…え？

ちょっと理解できない。
主、理解出来ない。

ちょっとメンタルがやられた。
いや、凹んでる場合じゃないよね。

斜め前の兼定くんを捕まえた。

和)「うおっ！…な、なんだ主か、 びっくりさせんじゃねぇよ！」

あ)「ごめんちゃい」

今度は怒られた。
大声で。

何この2人怖い。
とっつきにくいし、やりにくいし、何より部屋が狭いよぉ…。

どこで寝ろってんだよぉ〜。
もはや道端で泣けそう。

兼定くんにフラれた後、ゆっくり皆の後ろを歩く。
チラリと、骨喰くんがこっちを見た。

骨)「…なぁ、厚。主が元気ないみたいだ。…腹が減ってるのか？」

厚)「いやー…高確率で、骨喰のせいだと思うぜ」

骨)「？よくわからないが、厚が言うならそうなんだろう。謝るべきか？」

厚)「あー…まぁ…」

骨)「わかった」

いや、全部聞こえてたけど。
え、天然？

素なの？？
骨喰くんがこっちを振り向き静止する。

骨)「主。主が元気ないのは俺のせいだと厚が言った。何の話かよくわからないが、すまない」

そ、そんな真顔で謝られても…

骨)「俺には記憶がない。炎が全てを焼き尽くしてしまった。多分そのせいだと思う」

あ)「重ぇよ…」

なんちゅーヘビーな刀だよ。
あいたたた。

心が痛いわ！

骨)「おもい？あぁ、思いが伝わらなかったか。これも記憶のせいだ。すまない」

何だろう。
可哀想なはずなのに、たまにくるこの国広感。

あ)「気にしないでいいよ。記憶は、…まぁ作ればいいさ」

骨)「…つくる」

あ)「そう。これからの記憶を忘れなければいいよ」

骨)「そうか。わかった」

…本当かなぁ。
いまいち掴めない彼、骨喰くんは、また厚の元に行ってしまった。

和)「…まぁ、なんだ。記憶がなくてもやってけれるさ」

骨)「…さわるな」

和)「す、すまねぇ」

いや、骨喰くん。
記憶じゃなくて、言葉の問題だよ。

見てみなよ、兼定くんを。
泣きそうじゃん。

和)「あ、主ぃ…」

こんなでかい図体して、泣いてんじゃん。
ちょ、目立つ！

私が泣かしたみたいになるからさぁ！

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