鶴の泣き声５ (ページ8)

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128話ページ8

青江side

僕達の話でもしようか。
目の前に繰り広げられるのは地獄。

震える乱くんに、大丈夫だと声をかける事しかできない。
…ひどい事をするものだ。

僕以外…髭切さんは分からないけれど。
とりあえず僕以外の皆は過去に酷い扱いを受けてきたと聞いている。

きっと、見させられてる幻はその過去の事だろう。

乱)「怖い…っ。やだ…。一兄…薬研…厚…助けて。A…A…早く来て…っ」

カタカタと小さな肩を震わす。
きっと、彼も何を見させられるか分かっているのだろう。

だから、恐れる。

鶴)「…Aは、無事なんだな」

青)「きっとね」

それを聞いて、あからさまにホッとする鶴丸さん。
彼らの関係も、聞いてる。

聞いてなお、彼女が僕を選んだ事が謎でしかない。
とりわけ良いところなんてない僕。

しいて言えば、妖しい類のモノを見れたり斬ったり出来る事だ。
親しさでいったら、きっと目の前の彼らの方が親しかったはずだ。

強さで言っても、僕は劣るだろう。
それなのに、何故。

突然、頭の中で響くのは、膝丸さんの声。
きっとAが意識を繋げたのだろう。

ーー青江、聞いてた？

ーーあぁ。バッチリ。

ーーこの場所も、見えてるね？

ーー勿論だよ。…彼は何だか訳ありみたいだねぇ。

それから少しだけ言葉に詰まった彼女を待つ。

ーー…私は、そこまでいい人じゃぁないから。あの女を助けたくなんかない。

ーー僕は君が正しいと思うし、それに従うよ。君が助けたくないのなら、僕はそれが正解だと思う。

ーー…うん。ありがと。だから私は貴方を信じられる。

ーーそれはーー光栄だねぇ。

信じられる。
それは言葉からでも伝わる、絶対的信頼。

かつて僕を誇り、使ってくれた元主と同じモノだ。
それが僕ら刀にとって、どれだけ嬉しいか。

柄にもなく、胸の奥当たりが燃える。
ゴウッと、霊力が全身に廻る。

ーー霊力、借りるね。

ーーいくらでも。

君になら、いくらでもあげるよ。
例えどんな窮地に立たされていようが、僕は君を絶対に助けてみせる。

それが僕の、君に対する忠義だよ。

ーー青江、きて。

青)「…さて、行かなくちゃねぇ」

愛おしいあの人が、僕を呼ぶ限り。
僕は君に応えよう。

貴方side

青)「ふふっ。僕はにっかり青江。…僕をお呼びかな？」

あ)「えぇ。私の片割れだからね」

青)「一心同体って奴だねぇ？」

目の前に現れた私の半身。

蘆)「あんた…！結界は！？」

あ)「アンタより、私が上だったみたいね」