鶴の泣き声５ (ページ7)

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127話ページ7

膝)「ひと時であったが、兄者にも会えた。…あんなに楽しい日々はもう無いだろう」

膝)「裏切る形になって申し訳ない。だけど俺は…主を、あの娘を裏ぎる事だけは出来ないのだ」

ギュッと。
自分で自分の腕を握る膝丸。

膝)「こんな俺に優しくしてくれてありがとう。許しを乞おうなんて思わない。こんな事を言う俺は間違ってると思うし、可笑しいんだが…」

”主を、止めてくれ”
震える声で、話す。

それはまるで、”止める”と言うより”助けて”と訴えてるようだった。
私よりもうんと年上の神様が。

あの女を思ってーー頭を下げた。

ーー青江、聞いてた？

ーーあぁ。バッチリ。

ーーこの場所も、見えてるね？

ーー勿論だよ。…彼は何だか訳ありだねぇ。

ーー…私は、そこまでいい人じゃぁないから。あの女を助けたくなんかない。

ーー僕は君が正しいと思うし、それに従うよ。君が助けたくないのなら、僕はそれが正解だと思う。

ーー…うん。ありがと。だから私は貴方を信じられる。

ーーそれはーー光栄だねぇ。

チカチカと。
彼の”炎”が燃える。

目を瞑れば、あの綺麗な花弁が咲き乱れる。
ヒラヒラと。

ーー霊力、借りるね。

ーーいくらでも。

グッと目の前の膝丸に集中する。
私と喋れるよう、細工を施す。

あ)『じゃあ、取引しましょうか』

膝)「！？君、喋れない筈じゃあ…」

あ)『直接話しかけてるのだけれど』

膝)「こんな事、出来るのか…？」

あ)『まぁ実際は、そう聞こえるようにしてるだけ』

膝)「…俺は君を甘く見ていたようだな」

あ)『時間がないから。…とりあえず、声は出せるようにして』

膝)「…それは俺が出来る事では…」

あ)『嘘。あの中で霊力が高いのは貴方』

膝)「声を出せたとさて。逃げられたら困る」

あ)『だから、取り引きよ。その前に…貴方の主は何を考えてるの？』

膝)「…霊力、だ。君のような霊力。それと…君の親への復讐」

あ)『…親？あの人は、私の親を知ってるの？』

膝)「…あぁ」

遠くから、蘆屋と本郷の声が聞こえてくる。
…時間がない。

あ)『私は貴方の願いを叶える。貴方の願いは何？』

膝)「俺の願い…」

あ)『いいなさい。止めたいのでしょう？』

膝)「…主と、笑いあいたい。昔のように」

あ)『…交渉成立よ』

ゴウッと私と膝丸の周りに結界が貼られ、風圧で髪が舞う。
異変に気付いた彼らがドアを開ける。

が、もう遅い。
私と膝丸の腕には赤い糸が巻きつけられていた。

契約の印だ。

あ)「青江」