鶴の泣き声５ (ページ28)

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148話ページ28

乱)「アイツの家系は最悪だ。アイツの孫は、僕らにすり寄ってきた。嫌だったし、気持ち悪かった。だけど、逆らったらアイツに言うって脅されてた」

鶴)「アイツは穏やかになったんじゃないのか？」

乱)「その時はね。…だけどダメだよ。アイツは特にその孫を気に入ってた。アイツの孫は二人いたんだ。僕達に優しかった茜。お気に入りの葵。茜と燭台切さんは、恋仲だった。誰もが知っていたのに、葵だけは、知らなかった」

あぁ。
今すぐ顔を覆ってしまいたい。

嫌でも、この続きが分かってしまう。
それは鶴丸も同じようで。

怒ってるのがわかる。
伝わる。

乱)「あの日、葵は燭台切と茜の事を知ってしまった。幸せそうな2人をみた葵はーーアイツに全部バラした。嘘も吹き込んだ。アイツは怒って、燭台切さんを折った。茜の前で、大倶利伽羅さんの前で」

鶴丸の手をつかむ。
ぎゅっと、強く握る。

彼が消えてしまわないように、ぎゅっと。
鶴丸を、逃してくれてた燭台切。

そんな彼は、愛おしい彼女の前で折られた。
ポッキリと、為すすべなく。

乱)「始めにキレたのは大倶利伽羅。それに加担するように貞くん、そして三日月さんまでもが、アイツに斬りかかった。だけどアイツは、最後の大技に出た。…僕達を、お互いを戦わせた」

茜さんは、どうなってしまったんだろう。
彼女は無事、今を生きてるだろうか。

乱)「僕はいち兄に助けられて、こうやって生き延びれた。後はどうなったか。…大倶利伽羅さんと歌仙さんしか知らないよ」

終わり、と。
乱が軽く手を叩いた。

それは、この重くるしい空気を切り替えるために見えた。

あ)「…よく、頑張ったね」

乱)「別に。昔のことだしね」

あ)「貴方は私の大切な友人だよ」

乱)「なにそれ～。知ってるよ！」

苦しいくらいに、きつく抱きしめれば。
苦しいくらいに、きつく抱きしめられた。

私達はやっぱり、主でもないし、親子でも、姉弟でもない。
友人って言葉がしっくりくるんだ。

一)「乱、私は同じ粟田口として誇りに思うよ」

乱)「いち兄…」

鶴)「俺からも言わせてくれ。…すまなかった。それとありがとう」

乱)「鶴丸さん…。…うん、いいよ。鶴丸さんこそ、僕に、友人を作らせてくれて、兄弟と過ごさせてくれて、ありがとう」

鶴)「あぁ」

にっこりと。
幸せそうに笑った。

あ)「茜さんを探したいね」

乱)「うん。僕ももう一回会いたいんだよね～。…ま、一番会いたいのは、大倶利伽羅さんだけどね」