鶴の泣き声５ (ページ26)

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146話ページ26

私が知ってる乱藤四郎。
それは、生意気で口が悪くて刀剣一我儘なコ。

だけど誰よりもしっかり考えてるし、冷静だ。
たまに行く演練で、同じ乱藤四郎に冷たい視線を浴びせてたのを知ってる。

それは本来の姿である”可愛い”を捨てたから。
”昔”の自分を見るのは嫌なんだろう。

かと言って。
甘えてくるし、可愛い格好だってする。

…昔。
まだ私が高校生だった頃。

担任の先生が言ってた事を思い出した。
”親は子を選べない。また、子は親を選べない。そして、ペットだって。飼い主を選べないんだ”

私はどれに当てはめたのか分からないけど。
浮かんできた言葉は、確かにその通りだと思う。

刀剣男士だって。
主は選べないんだ。

あ)「乱」

乱)「なぁに、A。僕に聞きたい事でもあるわけ？」

あ)「うん。…前の、主について聞きたいんだ」

厚)「…それは、酷い話じゃないか、A」

薬)「あぁ。あまり思いださせてやりたくねぇ。こればっかりは、厚に同意だな」

わかってる。
それは、とても辛い事だ。

嫌な思い出をほじくり返せ、と話してるもの。

乱)「いいよ、別に」

一)「…いいのかい？」

いちの膝の上に。
不貞腐れたようにふて寝する包丁が座る。

乱)「うん、いい。えーっと、どっから話せばいい？」

あ)「乱が、話しやすい所から」

乱)「僕が顕現された時は既に、六振はいたかな。初期刀は蜂須賀さんだった。あぁそうそう、安定と歌仙はすでに顕現されたし、何なら残りは加州さんと薬研だった」

よいしょ、っと。
乱は毛布と一緒に私の膝に乗る。

何でもないように振舞ってるのが、痛いほど伝わる。
だからそっと、乱を両腕で包み込んだ。

乱)「初めて見る人が”主”。また僕を使ってくれるんだって。嬉しかった。…だけど本丸を案内されて、会った彼らの顔が暗い事に気付かない程バカじゃなかった」

目を瞑ったりするのは、思い出してるんだろうか。
その時の光景を。

乱)「最初は何でだろうって思ってたんだ。…わかったのは、その日の夜。…いきなり破かれたんだ、服を。僕は信じられなくて、抵抗した。そしたらどうしたと思う？…薬研に、僕を拘束させたんだ」

薬研が、困った顔で乱を見る。
どうすればいいのか、狼狽えてる。

それを無視し、話し始める。

乱)「それはまだ、いい方だって気づくのはまだ先だけど、僕のプライドは傷ついた。…泣いてる薬研を見たくはなかった。それから、仲間が増えるごとに、皆の顔は沈んでいったよ」