鶴の泣き声５ (ページ22)

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142話ページ22

あ)「清光、入るねー」

清)「いいよー」

あ)「安定、気分はどう？」

安)「あぁ、猫なんて嫌いだ。僕を見て笑ってる」

清)「うーん、いいんじゃない？」

あ)「変わりはなさそうだね」

清)「そーね。良くも悪くもって感じ」

あ)「そっか。…安定、ご飯食べれそう？」

安)「いっそ切ってしまえたら良かったのに」

清)「貸して。…ほら、安定。口開けて」

清光が、安定の口にご飯を運ぶ。

安)「…これは、何」

あ)「！安定…？」

安)「何を…」

清)「…ッチ。A、離れて！」

安)「やめろ！！触るな！！こんな物要らない！！必要ないよ！優しくして、傷つけるんだろ！？」

清)「安定！大丈夫。落ちつきな」

安)「離せ！！僕はもう、誰も信じない！！関わるもんか！！離せよ！」

清)「そーね。だけど俺はお前を信じてるよ」

安)「やめろ！！やめてっ…」

突然、暴れ出した安定を必死に清光が抑え込む。
が、ウチの安定はカンスト済み。

…練度の強さなんて、一目瞭然だ。

清)「…ってぇ…」

暴れるたび、清光が傷つく。
その光景に、胸が痛い。

一番辛いのは、安定や清光なのに。
一瞬、息を吸うのを忘れた程に。

私は、ショックを受けた。

あ)「…安定」

清)「な…！A、危ないって！」

あ)「安定、大丈夫よ」

安)「はー…っはぁ…っやだやだやだ！」

ガッと、安定の腕が口に当たり、血が出た。
だけど、痛くない。

清)「A！？」

悲鳴に近い声が、清光から聞こえる。

あ)「安定、信じたくないものは信じなくていい。疑って疑って、それでもこの人なら裏切られてもいいやって人だけ信じればいいの」

顔を、目を。
合わせるようにして、誘導する。

あ)「今見えてるモノは何？何が見える？誰がいるの？」

安)「…見え…」

あ)「ゆっくりでいいの。ちょっとずつでいいから、話してみて？大丈夫、ずっと聞いてあげるから」

安)「あ、るじ……彼奴が、清光に…やめてって、言ったんだ。だけど…あ、いつが…っ」

あ)「聞いてるよ、ちゃんと。ちゃんと聞いてるから」

安)「…っはぁ…っ辛い！僕は清光を見捨てたんだ…っ許してくれない。きっとまた、彼奴は清光を…次は僕が…っはぁ…っ辛い」

あ)「辛いのね」

安)「…っ辛いよ、A」

不意に、安定のくりっとした目と私の目が交じあった。
光が宿り、涙を流す。

安)「辛い、辛い…辛いよ！助けて、A！」

ガシリ、としがみつかれた私は、静かに頭を撫でた。
まるで、小さい子供をあやすように。