鶴の泣き声５ (ページ19)

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139話ページ19

”私の側にいて”
それは呪いのように彼に絡みつくだろう。

青)「君は直ぐに死んでしまうのに、僕を置いてくのに、君はそんな約束をするんだね」

あ)「そうだよ。私はズルイから、私が生きてる内は青江を折らせやしないから」

青)「…はは。酷い人だね」

青江が目頭を抑える。
私は後ろを向き、見ないようにする。

あ)「まだまだ、私は死なないよ」

青)「…うん」

あ)「早く帰ろうね」

青)「そうだねぇ」

あ)「青江」

青)「何かな」

あ)「護ってくれて、ありがとう」

青)「…どういたしまして」

僕は本当は知ってたんだ。
知ってて言わなかったのは、もしかしてこの自体を予想してたのかもしれない。

彼女の側にいるのは、彼だ。
彼女の1番も彼。

あの絶対的な信頼が、心底羨ましかった。
あの瞳で見つめて欲しかった

膝)「最低なのは、僕だね」

きっと僕を誰も責めやしないだろうな。
例え気付いたとしても。

弟だから、しょうがないって言ってくれるんだろうね。
僕の気持ちは、誰も知らないまま。

鶴)「君。どうかしたのか？」

髭)「うん？どうもないよ」

鶴)「そうか？…だけど君、泣いてるじゃないか」

髭)「泣いてる？泣いてるって、何かな？」

鶴)「君の目から溢れてるソレの事だ」

僕の目から溢れるモノ…
あぁ、これは。

汗じゃなかったみたい。

髭)「何でだろうねぇ」

何で、こんなにもーー

髭)「辛いのかなぁ」

鶴)「…それは、あの子に対してか？」

髭)「そうだよ。彼女に会うと、僕は一日中幸せな気持ちでいられるんだ。彼女が辛い時、僕は彼女を悲しめる全てを斬ってしまいたい」

ポカポカとするのに、チクチク痛む時がある。
それはきっと、僕が欠陥品だからだね。

髭)「僕は彼女の1番になれない。それが、なんだか悲しいみたいだね。…どうしてだろう？分かってたはずなのになぁ」

鶴)「君は、Aに恋をしてるんだ」

髭)「…こい？」

鶴)「そうだ。恋だ。彼女を、Aを自分のモノにしたいと思うんだろ？愛おしいと思うんだろ？」

髭)「…うん、思うよ」

鶴)「それが恋だ。君はAを好いてるんだな」

好き。恋。

僕に無縁の響きに聞こえるのに。
すごくキラキラしたモノに思えるのは何故だろう？

髭)「ふふっ。…ありゃ？僕はどうして嬉しいと思うのかなぁ？ふふ。今日は何だか、慌ただしい日だねぇ」

鶴)「…俺は君がAに恋しようがかまやしない。だがな、これだけは覚えておいてくれ。あの子を泣かせてみろ。俺は君を斬る」