鶴の泣き声５ (ページ15)

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135話ページ15

バカだ。
そう罵る蘆屋。

蘆)「…っ意味がわからないわ！”膝丸、行きなさい”
」

膝)「きっぱり断ろう」

徐々に、泣きそうになる蘆屋。

膝)「主、俺は代々蘆屋の家で顕現されてからずっと支えてきた。君で5人目だ」

…知らなかった。
彼はずっと前から顕現されていた膝丸だったんて。

膝)「君が歴代で1番めんどくさく、ましてや、女の主なんて始めてだ」

蘆)「はっ。今更なによ」

膝)「だが、1番愛おしいと思う」

蘆)「…」

膝)「人の子なんて、あっと言う間に大きくなってしまう。君はすぐ泣くし、怒るし、悪戯好きで手に負えない時もあった」

懐かしむように、膝丸は話す。
本当に、愛おしそうに。

膝)「君の幼稚園も小学校も中学高も高校も大学もずっと見て来た。それこそ、恋に落ちる瞬間もな」

笑いながら、彼女を見つめる。

膝)「俺はこの数十年間、退屈した時は一度もない。それは君がいてくれたからだ」

そっと、蘆屋の手を握る。

膝)「そんな君とーー俺は最後を共にしたいと思う俺は我儘だろうか」

駄目か、なんて。
…そんなの、蘆屋を見れば分かる。

ボロボロと大粒の涙を流す蘆屋は、憑き物が取れたみたいだった。

蘆)「バカねぇ、膝丸は」

フワリ。
花が咲いたように、ニッコリと微笑んだ。

岩)「…主、もう時間だ」

晴)「…あぁ」

軽く唱えると、私たちの周りに円が浮かび上がり光った。
私は最後まで2人から目を離さなかった。

本当に幸せそうに微笑み合う2人は、もうこちらを見ることもなかった。

晴)「行くぞ」

最後に見た姿は、炎に向かって歩き出す2人の後ろ姿だった。
…どうか、幸せで。

それからの事は、何も覚えてない。
本部につく頃には、私は意識を失っていたらしい。

私の隣には、ずっと青江がいてくれて。
それは青江が手入れを受けるまで側にいてくれたとか。

目を覚ました時、1番に見えた顔は、泣いてるお母さんの顔だった。
それから、私を罵りながらきつく抱きしめられた。

ごめんなさい、と言いながら私も泣いた。
お母さんは私をどうも思ってないと思ってたのに。

泣いてくれた事が嬉しかった。
心配してくれた事が嬉しかった。

その日の内に、晴信さん…私のお父さんも来てくれた。
全部、本当の事を聞いた。

お父さんとお母さんの馴れ初めや、どうして今まで黙っていたのかも。
一つ一つ話されてくうちに、私達は、本当の親子になってる気がした。

お父さん、と呼べば、なんだ、と無愛想ながらも少し照れたように笑った。