鶴の泣き声５ (ページ13)

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133話ページ13

聞こえて来たのは、男性の声。
だけど何処か懐かしかった。

蘆)「な…ん、で」

「いいか、膝丸。”刀を収めろ”」

膝)「あぁ」

言霊だ。
分かるのは、彼がここの誰より霊力が強い事。

蘆屋が主の膝丸にさえ、いとも容易く言霊を使う。
彼女だって、強くないわけじゃないのに。

「全く、何のザマだ。巫山戯てるのか」

低く落ち着いた声。
だけどそこには威圧を感じられる。

蘆)「…被験体が逃げました」

「そうか、とでも言うと思ったか？俺はこの実験には反対だった。どうみても、被験体の扱いが可笑しいだろう」

蘆)「…」

「それから、先程。刀剣男士ら8振を保護した。その内2振は精神的疲労が見え、衰弱しきっている。…意味は、分かるな？」

よかった。
彼らが、助かった。

8振と言う事は、みかやいまちゃんも入ってるのだろう。

「そこのにっかり青江で9振だ。…そのにっかりでさえ、身体的ーー…おい、蘆屋。お前の足元に誰がいる？」

蘆)「いえ、気のせいかと」

青)「…っ僕らの、主さ…」

「…何？」

蘆)「…ッチ」

どうやら、私の存在は蘆屋に隠されてたらしい。
見つけてもらった、と言う事に安心する。

「これは…。…蘆屋、本部に戻ったらお前の首はないと思え。おい、大丈夫か？」

あ)「…は…い」

「…これは酷い。直ぐに手当てをーーー」

蘆)「…っ全部貴方が悪いのに！！」

膝)「主っ…」

いきなり、蘆屋が爆ぜた。
文字通り、霊力がパリンッと割れた。

つまり、暴走し始めた。

蘆)「貴方が…貴方が私との縁談を蹴って、あの女に行ったから…っ！！酷いわ！どうしてなの！？」

「…」

蘆)「私はずっとずっとずーっと、貴方と結婚すると聞かされて、育ってきた。…のに、この仕打ちは何？霊力もないような女と結婚してーー挙げ句の果て、子供まで…っ」

膝)「落ち着いてくれ、主」

「俺は君と結婚する気は無かった。それに俺の妻を侮辱するのはいただけないな」

蘆)「…っ。酷い人…っ。私の気持ちを知ってて、あの女と同じ部署で働かせて…」

どうやら、蘆屋はこの男と許婚の関係だったらしい。
それをこの男が蹴った、と。

…男女のもつれなら、巻き込むなよ…。
どうせあれでしょ？

その女と私が似てたんでしょ？
はいはい、分かった分かった。

分かったから、早く手当てしてくんないかなぁ。
今かなりやばいんだよ、私も、青江も。

「…そうか」

蘆)「…憎い。貴方も、あの女も、子供も」

それから、と続ける。

蘆)「ーーこの時代も」