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『連れていかないでください…お願い、神様…お願いだよ…っなんで、なんで私が…』
なんで私が夢主なんだ。
その時、母は振り絞るように、呟いた。
「だい、じょ、うぶよ…だぁいじょ、う…ぶ…」
それっきり、母はぴくりとも動かなくなった。
ただ、透明な雫が頬を伝っていた。
その言葉が、なにかの呪いのように聞こえた。
「ゥウ"アア"アア"ア…!!!」
お父さんは、ようやく私に気づいたようで、一心不乱に私に駆けてくる。
ごめんね、お父さん。
私が、私じゃなければ。
こんな未来は来なかったかもしれないのにね。
『ごめんね』
私は、こちらに走ってくる鱗滝さんを横目に、私の首元を狙っている父に抱きついた。
がぶりと、肩を噛まれる。
えもいえない激痛が襲いかかる。
そんな"鬼"を鱗滝さんは水の呼吸で流れるように首を切り落とした。
灰となって消えていく父の体を、服だけになっても抱きしめていた。
「…っキャァァァァァ」
家の前に立ち尽くす近所の女の子が、この惨劇を見て悲鳴をこぼす。
そして、言ったんだ。
「ッ化け物!!化け物!!
家族を、そ、そんな惨たらしくッ化け物!!」
化け物。
月の光が我が家を照らして、壊された鏡がこちらをうつしだしていた。
頬に血をびったりと付けたその姿は、
化け物そのものだった。
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作者名:ところどころどくろ | 作成日時:2023年4月21日 19時