ある生徒のハロウィーン ページ50
「A！！」
あの子が、帰ってきた____そのことに酷く安心している自分の存在に初めて気が付いた。スリザリンの奴らが阿呆みたいに騒いでいるのを横目に僕はノットとグリーングラスに囲まれて笑う彼女をそっと見る。
目が合うことは決して無い。なぜなら、彼女は僕のことを視界に入れたく無い程、嫌っているからだ。
そう思って僕は彼女から目を逸らした。
・
その夜。
眠れずに起き上がり、乾いた喉を潤わしに暗がりの談話室に行くと、暖炉の前に小さな人影が見えた。
──「おい」
就寝前にとっくに女子寮に行った彼女がなぜここにいるんだと近寄れば彼女はビクリと肩を震わせた。
慌てて何かを隠すように動き立ち上がり早々と女子寮に戻っていこうとする彼女の腕を掴んで引き寄せた。
「さ、触らないで！」
「……怪我したんだろ」
その言葉に彼女は抵抗の動きを止める。図星だったようだ。僕は彼女をソファに半ば押し倒すように座らせ、美しい雪空の瞳を見下ろした。
いつものように敵意を向けてこない彼女に僕は少し安堵しつつ屈んだ。
「足首を捻ったんだろう、見せろ」
「どうして……それを」
「歩き方が変だっ──」
僕は慌てて口を噤んだ。これではいつも見ていると言っているのと同じじゃないか。
恥ずかしくなり俯いた僕は何も言わず彼女のパジャマの裾に捲り上げた。
「っ」
雪のように白く滑らかな足が露になる。
「自分でなお……」
「静かにしろ、奴らが起きてくる。君は大人しく僕の処置を受けていればいい」
確認するように触れると彼女は呻いた。案の定、青く腫れ上がった足首があった。
「こうなる前に医務室に行くという考えは思い浮かばなかったのか？ 少なからず常識的に賢いと思っていたんだが違ったようだね」
僕の皮肉に彼女は些か眉を寄せたが逡巡するように眼差しは揺れ、叱られた子供のように口を尖らせて言った。
「……だ、だって、心配させてしまうから、後で自分で治せばいいと思って……」
透き通る声は誰かを想う言葉しか言わない。誰かを守るために自己犠牲する彼女が僕には心底理解出来なかった。彼女とは相容れない、それは事実だった。足首にそっと手を触れ、杖先を向ける。
「
彼女の表情は強ばっていたが次第に柔らかくなる。魔法によって腫れた足首は少しは治ったようで僕は安堵の息を吐いた。
「…………ありがとう、マルフォイ」
小さな声に僕は杖を握り締めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 129人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つき(プロフ) - あさん» そのように認めてくださって感謝します。あんな形ではありましたが別サイトに私の小説を読んでくれている人がいると知れて嬉しかったです。今後このようなことがないよう気をつけていただければと思います。これからもご愛読いただけると嬉しいです (2月8日 18時) (
レス) id: 7cdc86589a (このIDを非表示/違反報告)
あ - 先程別サイトの方を消させていただきました。勝手な無断転載をしてしまったことを深く反省しています。本当に申し訳ありません。 (2月8日 18時) (レス) @page21 id: 60a5994a82 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つき | 作成日時：2023年8月14日 9時
