杞憂であればいい ページ43
ぐっと堪えるように下唇を噛みながらドラコは退いた。それに倣って、取り巻きたちも道を開ける。
Aは俯くドラコの姿を酷く冷たく見下ろして一歩踏み出すと、ハリーとロンに向かって清々しく軽やかに挨拶をした。
「何だか久しぶりね！ 元気にしてたかしら？」
まるで嘘のように自分にはコロリと愛らしく微笑むAにハリーは顔を赤くした。
「う、うん……久しぶり……！」
「あぁそうだわ。ハリーあなた、この前、魔法史のノートを取り忘れたって言ってたでしょう？ 私ので良ければ貸してあげるわ」
ハリーは目を瞬かせる。ロンは頬を赤らめながら、「ぼ、僕もいいかな」と便乗し始める。
皆の注目を他所に話し込み始めるセオドールとダフネを含む五人にドラコは歯を食いしばって廊下の床を見つめていた。
「それじゃあ、図書館に行きましょ」
歩き出した五人にドラコは怒りに燃えた鋭い視線を送る。目に映るのは花咲くように眩しく笑って話すAだけだった。
「Aったら、ポッターたちとつるむなんて正気じゃないわ。私たちといる方が絶対楽しいのに……どうして陰気なノットや小憎らしいグリーングラスといるのよ！」
パンジーが憎々しげに見やって言い放った。寄り添うように絡められた腕を鬱陶しく思いながら振りほどく。
ドラコの家柄や容姿に憧れ気遣う女はスリザリンには沢山いた。
でも、その中でたった一人だけ鼻からドラコを拒絶するのはAだけだった。
──『あなたが大嫌いよ、マルフォイ』
にこりとも、話すこともせず、顔を合わせれば舌打ちが飛んでくるか鋭い眼光が返ってくるかだけ。
あの無邪気で愛らしい天使のような微笑みを向けられた試しが無い。
ポッターたちが向けられて自分に向けられないとはドラコにとって、癪だった。
常に上から目線で、傲慢で、冷酷で、大嫌いなヴィトグレーデ。あの女のことを心の底から嫌って嫌って、憎んでやりたいのに、あの傲慢な澄まし顔が頭から離れない。
──『ドラコ』
馬鹿らしい。あの頑固な女が僕をそんな風に呼ぶ日が来るわけないのに。
貫くように強烈な眼差しが、どうしても忘れられない。吹雪のように冷たい灰色の目が、大嫌いなのに。
「……行くぞ。こんなところにいつまでも突っ立ってられない」
ドラコは相当、ご機嫌斜めだった。
戦々恐々とする取り巻きたちは顔を見合わせ何も言わない方がいいと判断し、ドラコの後を静かについていった。
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つき(プロフ) - あさん» そのように認めてくださって感謝します。あんな形ではありましたが別サイトに私の小説を読んでくれている人がいると知れて嬉しかったです。今後このようなことがないよう気をつけていただければと思います。これからもご愛読いただけると嬉しいです (2月8日 18時) (
レス) id: 7cdc86589a (このIDを非表示/違反報告)
あ - 先程別サイトの方を消させていただきました。勝手な無断転載をしてしまったことを深く反省しています。本当に申し訳ありません。 (2月8日 18時) (レス) @page21 id: 60a5994a82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：つき | 作成日時：2023年8月14日 9時
